中国鶏肉事件、ささやかれる"政府の陰謀説" 食品不正の泥沼、「外資の安心神話」は崩壊した

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米国系と対照的なのは、中国進出歴が「外資」の中で最も長い台湾企業。いくら中国で幹部候補が長年の経営の中で育ってきても、トップだけは台湾人を送り込み続けることにこだわっているのは、中国人と中国社会のあり方を知り尽くした台湾企業ならではの対応策であるということも理解できる。

今回の事件に絡んで中国でささやかれているのは陰謀説である。この問題を発覚させることで、米オバマ政権に対するプレッシャーをかけるという狙いがあるのではないかということだ。

法が完備されても、不正がなくならない理由

米国系ファストフード店の対中依存度は非常に高い。米国企業にとって中国市場で最も成功したケースだろう。これだけの企業がもし営業停止などで「一網打尽」にされてしまえば、米国社会にも大きな影響を与えかねない。不正の発覚は偶然だとしても、うがった見方をすれば、今回の事件で中国政府は各チェーンを人質に取ることができたと言える。

中国メディアも現在、「なぜ米国系飲食店で不正が起きたのか」といった論点に批判を集中させているように見える。これは半ば“米国たたき”を誘導するような世論操作が行われているとみることも可能だ。

いずれによせ、中国の食の安全への信頼はすでに崩壊の瀬戸際にある。最大の問題は、食品の安全を守るための法律があっても、誰も守ろうとせず、誰も取り締まろうとしないという、法モラルの崩壊であろう。

もともと中国においては、毒入りギョーザ事件などの影響もあって、食品安全法が2009年に施行されて以来、法律面ではほぼ完備されたと言われている。しかし、2009年以降も食品不正は後を絶たない。

たとえば、2012年には、小肥羊に卸されていた「羊肉」が、実はネズミやその他の動物の肉をつかった合成肉だったことが明らかになった。2013年には、ケンタッキーフライドチキンに使われる鶏肉が、抗生物質や発育剤を大量投与した「速成鶏」であったことが判明して大騒ぎになった。

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