(第17回)90年代以降の投資減少はバブル崩壊によるものか?

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 バブルとその崩壊が日本経済に大きな影響を与えたことは、疑う余地がない。

91年に大蔵省が行った「総量規制」は、銀行などの不動産関連融資を量的に抑制した。また、80年度まで高い伸び率を示していた設備投資が91年度から急激にマイナスになったのは、バブル崩壊のショックによるものだろう。さらに、住宅投資が先に見たような動向を示したことにも、不動産価格バブルとその崩壊の影響が見られる。

貸し渋りが投資減少の原因ではない

しかし、銀行の貸し渋りが投資減少の主因という考えは、データでは跡づけられない。まず、この期間に銀行の貸出残高が減少したわけではない。下図に見るように、総貸出平残(銀行計)は、98年頃までは、500兆円を超すレベルで推移している。減少したのは、それから後だ。

また、仮に投資資金需要があったにもかかわらず、銀行の貸し渋りが原因で貸し出しが減少したのであれば、長期金利は上昇するはずである。つまり、「クラウディングアウト」が起こったはずだ。しかし、現実にはそうしたことは起こっていない。図に見るように、長期金利は、むしろ低下した。91年には7%を超えていたものが、95年の3%台まで急速に低下したのである。

さらに、銀行は貸し出しを行うのがそもそもの業務である。資産のリスクコントロールが必要なのであれば、貸し出し審査を厳しくしたり、貸出金利を引き上げるなど、さまざまな方策でそれを行うことが可能である。「自己資本比率を維持するために貸し出しを減らす」というのは、「角をためて牛を殺す」類いの行動であり、とても合理的とは思えない。食中毒を恐れて何も食べず、衰弱死するようなものだ。いかに日本の金融機関が合理的行動をしないからといって、自らの収益源を放棄するような愚挙には走らないだろう。

また、仮に銀行が貸してくれないとしても、少なくとも大企業であれば、社債発行によって投資資金を調達することは可能なはずである。


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