オダキューOXの挑戦「鮮魚をその場で焼いて売る」《それゆけ!カナモリさん》

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 オダキューOXの「オーダー焼き魚」の販売は、もちろん競合が模倣することはできるサービスだ。だが、片手間ではなく、専用調理場を設けるという力の入れようから、先行優位を構築しようという意図が見える。確かに、例えば定食屋で食べる同じ焼き魚でも、どうもパサパサして美味しくないものもある。焼き方の巧拙で味が分かれる。

 そのスキルを確たるものにし、「オダキューOXの焼き魚はうまい!」という認知を獲得しようとしているのだろう。また、焼きたてを持ち帰っても若干冷めるのは否めない。掃除の手間や時間をかけない再加熱の方法をアドバイスしたり、焼き魚に合う副菜のレシピを提案したりという展開も予想される。

 「鮮魚を焼いて売るスーパー」から学ぶべきもの。それは、競合と同じ土俵で戦わないという戦略と、大量仕入れ・大量販売という旧来のスーパーのビジネスモデルが崩壊しつつある「縮む市場」と化した日本での生き残り策を「加工度の向上」というキーワードで考えさせてくれるものだ。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2010年5月28日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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