日立製英国車両「亀裂発生」、その後どうなった 「乗客への情報提供」当局は評価、肝心の原因は?

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ところが、同車両をめぐっては4月の段階で「ヨーダンパー(台車と車体をつないで揺れを抑える装置)ブラケットの取り付け部」にも亀裂が起きていたことが判明していた。

リフティングポイントの場所を示す図解。基地で車両を持ち上げる際に使い、通常の運行には使用しない部分であると説明している(画像:Hitachi Rail)

こうした背景から、鉄道安全規制当局である鉄道・道路規制庁(ORR)は6月7日、日立をはじめとする関係者と共に、「列車のジャッキプレート(リフティングポイントに当たる)とヨーダンパーブラケットの取り付け部に発生した亀裂の根本的な原因を究明する」との方針を打ち出した。

最初の亀裂発見から現在に至るまでの経緯は以下の通りだ。

【クラス800シリーズ 亀裂問題の経過】
4月11日:クラス800の定期検査でヨーダンパーの亀裂を発見
5月8日:クラス800のリフティングポイントの前面に亀裂発見、他編成にも亀裂の存在を確認
*GWRなど4社が運行のクラス800シリーズ全182編成を運用から外し検査実施
*ORRの支援を受け、列車が運行を再開しても安全であることを確認
*同日中に「ハル・トレインズ」運行車両が運用に戻る
5月10日:トランスペナイン・エクスプレス(TPE)運行車両が運用に戻る
5月13日:GWRとLNER、列車本数ほぼ正常に復帰
5月20日:日立レール、ロンドン西部にある車両基地でメディア向けに説明会実施
6月7日:ORR、亀裂トラブルのレビュー実施日程を発表
6月25日:利用者向け対応に関するレビュー結果を発表
9月中(予定):亀裂原因を含むレビューの暫定結果を発表予定
 (英鉄道専門誌Rail Journal他から筆者まとめ)

他車種でも亀裂発見、当局が経過を調査

亀裂は「クラス800シリーズ」だけでなく、2018年からスコットレール(スコットランド)で走り出した日立製の近郊電車「クラス385」にも見つかった。

そこでORRは、今回のトラブル発生から関係する全車両の運用停止、運休に伴う利用客への案内、検査後の運用復帰といった一連の動きで得た「教訓」について検討を進めることとした。

ORRはこのレビューの主な目的について「鉄道業界全体に貴重な知見を提供する」と位置付ける一方、「運行の安全性と利用客への影響」についても対象として調べを進めるとの考えを示している。

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