63歳元記者が司法試験合格、甘くない9年の道のり 「サラリーマン人生見えた」50代からの奮起

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ところが、予備試験は1万人以上が受験し、合格者は400人台にすぎない。しかも、合格者の多くは優秀で頭の回転も早い現役の大学生や大学院生である。くたびれた中年の私はかなわない。13、14年と予備試験の短答試験に落ち、論文試験に進めなかった私は、法科大学院ルートに変更し、通えるところを探した。

その時、神保町にある日本大学法科大学院が15年度から夜間にも開講することを知った。受験したところ既修者コース(2年制)に合格したので、上司の許しを得て通うことにした。57歳で約35年ぶりに通学定期を買い、バックパックを背負って通学を始めた。

入学時、私の同級生は未修者コース(3年制)からの進級なども含めて26人いた。フルタイムの社会人は私を入れて5人。男性が4人、女性が1人である。

子どものような同級生とも強いつながりができた

教員は元裁判官が多く、東京高等裁判所の裁判長や最高裁判所の調査官を務めた大物が並ぶ。学者も含めて先生方は熱心で、丁寧に教えてくださった。当然というべきか、課題が出ることが多く、予習、復習を含めてこなすのが大変だった。

土曜日は授業が終わった後、夜遅くまで大学院に残り、レポートを作成した。日曜日は朝から夜まで勉強しないと追いつかなかった。時間に追われる毎日で、社会人はもちろん、子どものような同級生とも強いつながりができた。

母校の日本大学法科大学院の前に立つ上治信悟さん(写真:AERA dot.編集部)

17年3月、無事修了した。成績が一番だったので総代として証書を受けとった(すみません。ここ、自慢させてください)。めでたく法務博士になった。あとは合格するだけだった。しかし、司法試験は甘くなかった。

ここで、司法試験について少々説明する。司法試験は例年5月の連休明けに4日間行われる。

第1日が選択科目(私は知的財産法)、憲法、行政法、第2日が民法、会社法(商法も一応出題範囲)、民事訴訟法、1日の休みを挟んで第3日が刑法、刑事訴訟法で、ここまでが論文である。第4日は短答の憲法、民法、刑法である。

論文の試験時間は選択科目が3時間、他の科目は各2時間で、1枚23行の横書き8枚綴りの用紙に手書きで書く。短答では、受験者の3、4分の1程度を足切りする。4日間合計で19時間55分のマラソン試験である。

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