難治性疾患の克服に全力、新薬を世界同時開発--ノバルティス オンコロジー事業部門プレジデント アーヴェ・オプノー

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--タシグナについて、ベストセラー薬のグリベックとの比較試験を行い、治療開始12カ月時点で、すべての治療有効性の評価でグリベックを上回る効果を示したと発表しました。ずいぶんと思い切ったことを行いましたね。

グリベックよりもいい結果が出たことには私たちも驚いた。まさかグリベックに勝てる薬など出てこないと皆が思っていたからだ。ただ、勝算はあった。タシグナは開発段階で、Bcr−Ab1と呼ばれる異常なタンパクをより選択的に標的とするように分子設計されていた。前臨床試験ではグリベックと比べて、Bcr−Ab1に対して高い選択性と強い阻害活性を持つことが確認されていた。タシグナを世の中に送り出したことで、グリベックが効かなくなった患者に、大きなメリットをもたらした。欧米では09年、日本では今年1月、慢性骨髄性白血病の1次治療薬として承認申請した。

薬価制度改革を高く評価する

--がん治療薬の薬価はうなぎ上りに高くなっており、各国でも高薬価が問題になっています。英国では経済的な費用対効果が見込めないとされた場合には、薬価収載されない仕組みも導入されています。

がん治療での薬剤のコストは、入院や放射線、緩和ケアなどにかかるコストと比べて決して高いとはいえない。欧米では、それらにかかるコストは、がん治療のコストの約8割を占めている。われわれが有効な製品を開発することで、患者の生活は劇的に変わる。そのような場合、費用対効果は極めて高い。

--日本では4月に新しい薬価制度がスタートし、価値のある新薬については、薬価が維持される仕組み(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)が導入されました。こうした日本の動きをどう見ていますか。

革新的な製品については、2年に一度の価格引き下げが行われず、価格が守られるという政策については、高く評価している。また、日本の政策は、私どもの開発戦略にも合致している。

(聞き手:岡田広行 撮影:鈴木紳平 =週刊東洋経済2010年6月5日号)

Herv・Hoppenot
ローヌ・プーラン(現サノフィ・アベンティス)を経て、ノバルティス入社。グローバル・マーケティング部門、オンコロジー部門のチーフ・コマーシャルオフィサーを経て、2010年現職。

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