小保方氏の博士学位、問われる早稲田の決断 取り消さなければ日本の科学の信用は失墜する

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早稲田大学全体の信頼が揺らいでいる(写真:東阪航空サービス/アフロ)

法律論と研究倫理の埋まらない溝

調査委員長の小林弁護士はコンプライアンスの専門家であり、「学位の剥奪は法的行為」であると述べた。調査委員会の会見を受けて同日開かれた早稲田大学の鎌田薫総長の会見でも、調査報告は「法律論として成り立っている」との見解が示された。

法律家の目から見れば、重大な問題点はあっても、本人は過失であるといい、不正を積極的に行う意思はなかった、そうであるなら、不正(=違法)と認定することはできない、というのだろう。「学位に関する規定に、たとえば『大学の名誉を著しく棄損した場合は学位を取り消す』などの文言があれば、取り消しという結論もあったかもしれない」と、小林調査委員長の補佐を務めた辺誠祐弁護士はいう。

だが、科学者や研究者たちが問題としているのは、小保方氏に法的責任があるのかどうか、ということではない。小保方氏の科学研究者としての倫理であり、論文が博士学位取得に妥当するものなのか、ということだ。科学者は研究倫理という規範に従って研究を進め、論文を書く。疑わしい点があれば、それを是正しない限り科学として成立しない。

今回の調査委員会の結論が通れば、早稲田大学では、科学論文として不備があり、作成過程に不正があっても、いったん博士号が与えられれば取り消されることはない、と世界に公言したに等しい。過去から未来にわたって早稲田大学が与えた学位への信頼はなくなる。調査委員会は、これほどの事態に早稲田大学と日本のサイエンスを追い込んでいるという自覚があるのだろうか。

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