大幅赤字に転落した日本郵船、今11年3月期黒字計画の「真実味」

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 まず、約1年前を振り返ってみよう。前期は期初に営業利益530億円、経常利益400億円、最終利益180億円の黒字を見込んでいた。コンテナ船主体の定期船や航空運送の部門経常赤字を、バラ積み船など不定期専用船の黒字が補って余りあるというシナリオだった。その3カ月後の09年7月には、定期船の通期赤字が倍以上に膨らむほか、不定期船の黒字見通し額が縮小するが、下期の回復に期待するとのことで通期黒字化の旗印は下ろさなかった。

ところが、昨年10月にはコンテナ船の赤字がもっと膨らみそうだったことや、バラ積み船の黒字縮小懸念も高まり、通期黒字化を断念。さらに今年1月には200億円台にまで通期営業赤字が膨らむとした。しかし、実際には1月のコンテナ船や航空運送の赤字見通しが厳しすぎたため、昨年10月の想定線に着地した。

通期予想   期初計画 昨7月修正 昨10月修正  1月修正    実績
 営業利益  530億円 200億円 ▲180億円 ▲220億円 ▲180億円
 経常利益  400億円  40億円 ▲330億円 ▲360億円 ▲304億円
 最終利益  180億円 ▲50億円 ▲270億円 ▲290億円 ▲174億円

主要部門別の部門経常利益で見ると以下の通り。定期船の赤字見通しや不定期船の黒字見通しが甘かった一方、航空運送の赤字見通しは厳しすぎたことになる。

通期予想   期初計画  昨7月修正 昨10月修正  1月修正    実績
定期船  ▲160億円 ▲340億円 ▲500億円 ▲580億円 ▲554億円
不定期船  700億円  540億円  360億円  370億円  366億円
航空運送 ▲200億円 ▲220億円 ▲210億円 ▲170億円 ▲152億円

前10年3月期に利益見通しを大きく見誤った日本郵船だが、今11年3月期については売上高1兆9000億円(前期比11.9%増)、営業利益740億円、経常利益650億円、最終利益350億円と、黒字浮上を会社は計画している。これらはどこまで信用していいものだろうか。順に見ていくことにしよう。

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