メットライフが募集人情報流出の失態 「ほけんの窓口」の情報がライバル「みつばち」に

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情報管理や危機対応の欠陥を露呈したメットライフだが、何より、トップに情報が上がるまでの情報伝達の仕組みに問題があった。

問題発覚後、業務部門などの現場に続き、事態を知らされたのが、危機管理とコンプライアンスの部門。が、どちらも現場と一緒になっての火消しに終始し、その週の営業日がまるまる費やされている。「個人情報の漏洩=重大問題」という意識があれば、迅速に社長まで一報が伝わっていいはず。

たとえ、金融庁のガイダンスが示す金融庁に対する報告事案に当たらないとしても、現在の日本が抱える個人情報管理に対する問題意識があれば、マニュアル通りの判断はすべきではなかった。メットライフのシャー社長は、情報が伝わるや即座に深刻さを把握、事態収拾に乗り出し、経営陣に健全な危機意識はあった。「再発防止はもちろん、(募集人の情報まで含めて重要な)個人情報であるというように社内の意識を改め、情報管理や危機対応についても改善していく」(シャー社長)。

代理店を“下に見る“保険会社の体質

それでも、ほけんの窓口はいまだ、メットライフの再発防止策などの対応に、十分納得していないようだ。メットライフにすれば、保険の流通改革をともに志向する来店型保険ショップ最大手、ほけんの窓口を重要な販売パートナーと考えており、良好な関係を再構築したい考え。一方で金融庁も、問題の原因と再発防止の報告を求めているが、その後どうなるかはメットライフの回答次第となり、現時点では不透明である。

メットライフの場合、個人情報の漏洩に過敏であるはずの米国社会で、生保大手として振る舞ってきたはずだが、それでも今回のような不祥事を引き起こしてしまった。役所や業界のガイダンスに安易に頼り、思考停止してしまうような生保会社は、メットライフだけではないだろう。ともすれば代理店を下に見たり、軽く扱いがちな、保険会社の日頃の意識や姿勢が今回の情報流出でもその対応に表れ、それが代理店の感情を逆なでし、騒動をよけいに大きくしたのかもしれない。保険業界は深刻な問いを投げかけられている。

大西 富士男 東洋経済 記者

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おおにし ふじお / Fujio Onishi

医薬品業界を担当。自動車メーカーを経て、1990年東洋経済新報社入社。『会社四季報』『週刊東洋経済』編集部、ゼネコン、自動車、保険、繊維、商社、石油エネルギーなどの業界担当を歴任。

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