キヤノン、カメラ不振も全社的コスト削減奏効 カメラ市場の縮小は止まらず

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一つは売り上げに対する好採算製品の割合が上昇したことだ。オフィス事業では採算性の低いモノクロプリンターの需要は伸び悩んだものの、カラープリンターや複写機などの新製品もあり、高付加価値品では販売が好調で利益を押し上げた。減益のカメラ事業も、スマートフォンによって侵食された部分は主にローエンド製品で、高単価商品である一眼レフの売り上げ減少は比較的軽微。そのため、売り上げの減少幅が大きい割には利益は減らなかった。

二つ目が全社を挙げたコストダウンの効果。カメラ需要の減少に合わせて海外工場での人員配置の見直しを行ったほか、工場における生産自動化を進めることで固定費削減を行った。コスト削減額は通期で390億円を予定しているが、進捗は「見込み以上」(田中CFO)だという。

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スマホによる代替でコンパクトカメラの市場は減退

悩みの種はなんと言ってもカメラ市場の動向だ。田中CFOは、コンパクトカメラについては「今年がボトム」、レンズ交換式については「スマートフォンに削られたとは考えたくない。欧州やアジアの景気の影響などで一時的に需要が後退している」との見解を示したが、それはやや楽観的すぎるのではないか。一時の不調にとどまらない長期の下降トレンドとみるべきなのかもしれない。

(撮影:尾形文繁)

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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