だからブリヂストンは五輪への協賛を決めた TOPスポンサー契約が映す、グローバル戦略の転換

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これまで、ブリヂストンはどちらかというと、高価格帯の付加価値製品に強みを持っていた。たとえば、「ECOPIA」(エコピア)は分子レベルで原材料を結合し、エネルギーロスを減らした低燃費タイヤだ。一般的なタイヤの2倍前後の価格だが、経済性やタイヤの性能を意識する先進国で受け入れられてきた。

石橋専務は新興国メーカーの勢力拡大に危機感を示す(撮影:今祥雄)

とはいえ、世界のタイヤ市場において目下の成長が著しいのは、新興国を中心とした普及価格帯の製品。ブリヂストンの課題は、このマーケットに対応できる製品を持っていないことだ。

2013年の連結市場別売上高は、米州(中南米含む)、日本、欧州の合計が8割弱で、新興国を含むその他の市場は2割強にとどまる。普及価格帯においては「新興国メーカーの勢力が広がってきていることに危機感を持っている」(石橋専務)。

もう一段の成長には、普及価格帯の育成が不可欠。機能とコストを絞った新製品を投入し、この価格帯の販売を伸ばしていくという狙いにぴったりだったのが、幅広い層にアプローチできるオリンピックだった。

TOPスポンサーのうまみ

実際、TOPスポンサーはさまざまな権利を有している。IOCや大会組織委員会に対するカテゴリー商品の納入第一交渉権、オリンピックマークなどの使用権、大会期間中のホテル・チケットなどの優先購入権といった具合だ。ただ、これらの権利を闇雲に行使するだけでは意義が薄い。最も効果的な分野に、最も影響力のある形で権利を使うことで、その効果を最大化することが何より重要となる。

たとえば、TOPスポンサーに2005年から加わった米ゼネラル・エレクトリック(GE)。同社は2008年北京大会で水力発電所のタービンや選手村の医療機器(MRI)、2012年のロンドン大会でガスエンジンによる電力供給やドーピング検査装置を提供した。こうした実績をテコに、開催都市での大量のインフラ受注につなげている。

日本企業で唯一、1988年からTOPスポンサーを務めてきたパナソニックは、世界中から技術者が集まるオリンピック会場を絶好のショーケース(見本市)機会と捉えている。

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