菅首相、ワクチンと五輪頼みの「9月解散戦略」 衆院選勝敗ラインは安定多数、過半数は退陣も

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そこで問題となるのが、次期衆院選と自民党総裁選の順番だ。衆院議員の任期満了は10月21日で、菅首相の総裁任期切れは9月30日。「9月解散―10月投開票」は菅首相の解散宣言による総裁選凍結が前提となる。しかし、コロナ・五輪政局が暗転すれば、状況は一変する。

自民党総裁選管理委員会(野田毅委員長)は8月のお盆明けにも、総裁公選規程に基づいて「9月7日か8日の告示―同20日か21日の投開票」という総裁選日程を決めるとみられている。この日程決定はパラリンピックの開催時期と重なる。

多くの感染症専門家は「五輪開催による人流増加で、お盆前後には東京の新規感染者数がステージ4(感染爆発)の状況になる」と予測している。そうなれば、1年前の総裁選で菅首相に惨敗した岸田文雄前政調会長や石破茂元幹事長が出馬に動く可能性がある。茂木敏充外相や河野太郎規制改革相も総裁選参戦を模索しそうだ。

五輪成功で総裁選先行の可能性も

その場合、岸田氏らは9月初めにも出馬を表明するとみられている。そうした状況で菅首相が総裁選前の解散断行を狙えば、「党内の反対論が噴出する」(閣僚経験者)のは避けられそうもない。

一方、五輪成功でも菅首相が総裁選先行を選ぶ可能性もある。岸田、石破両氏も「菅政権がしっかり仕事をしていれば、無投票再選も容認する」(石破氏周辺)とみられているからだ。

菅首相だけの出馬となれば、9月7日か8日の告示の時点で、無投票再選が確定する。それを受けて政府が9月21日までに臨時国会を召集すれば、菅首相の解散時期の選択肢は広がる。野党側が要求するコロナ禍で困窮する経済の回復のための大規模補正予算を編成し、臨時国会で成立させてから解散することも可能だ。

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