米国は日米同盟の成り立ちを認識せよ ケネス・パイル教授に聞く日米関係の今後

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7月、閣議決定により集団的自衛権の行使容認に踏み切った安倍政権。この歴史的な決定が国際社会に与える影響について、米国きっての知日家であるケネス・パイルワシントン大学教授に聞いた。

国際環境の大変化の中にある日本

ケネス・パイル●ワシントン大学歴史・アジア研究教授。初代米国アジア調査局長。日米友好委員会会長、日米文化教育交流会議共同議長など歴任。『日本への疑問』(1992年刊)は米政府高官必読書。その高官たちの支援もあってジョセフ・ナイ、エズラ・ボーゲルらによる「ナイ・イニシアティブ」が作成され、1994~96年の日米防衛関係改善に役立った。将来の日本の安全保障政策をめぐる議論の先駆をなす。

――日本の外交政策は“大転換”、もしくは“静かなる革命”の真っただ中にあると述べているが、注意深く言葉を選んでいる印象があります。

今、日本で起こっていることはきわめて重要で、それは疑う余地がない。冷戦が終わって以来、日本の外交戦略は大転換している。私が使っている2つの言葉は劇的すぎるかもしれないが、その変化はしっかりと前進し、ゆっくり進化している。日本の国際的な役割には大きな変化が待ち受けている。

――集団的自衛権行使容認の政策を追求してきたのは、自民党だけではない。2009~2012年の民主党政権下でもそういう動きはあった。

野田政権下ではそれが顕著だった。当時、さほど注目されなかったが、いくつか重要な変化がその時に起こった。それは安倍政権が追求している政策の土台となっているともいえる。

――リベラルな人たちは、これまでの政策を修正する今回の決定を、問題視している。

日本は今、国際環境の急速な変化に突き動かされていることを認識する必要がある。これは明治維新以来の日本の歴史的なパターンだ。つまり、国際環境の変化という現実に対応し、新しいグローバルな秩序に合うよう、日本国内の諸制度を再組織化していく過程にある。

――中国は、そうした日本への対応を誤っているようにみえる。

そうだと思う。習近平国家主席は中国の外交政策をより大きく見せようとして政策課題を高めに吊り上げている。証拠は多く見られる。これは日本にとっては大きな挑戦だ。中国の行政機構がやっていることは、非常に強力な反日ナショナリストの色彩が濃厚だからだ。習近平体制は向こう10年続く。日本に対する挑戦はずっと続くことになる。すぐ消えてなくなるものではない。

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