日本一速い男、星野一義の副業ビジネス成功例 創業40年以上、インパル創業から現在と未来

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ショールーム内に展示されたホイール(筆者撮影)

当時の預金約5000万円を原資に、すべて自己資本でゼロからはじめた新事業だった。最初に手掛けたのはホイール。当時から自動車のカスタマイズパーツとしてかなり人気が高かったためだ。「レイズ」「ワーク」「スピードスター」「レーシングサービスワタナベ」「ハヤシレーシングホイール」など、いずれもレース出身の創業者が設立したメーカーが作る製品が大ヒットし、百億円規模の年商を上げる企業もあった。

まずは生産を委託できる企業を探した。自社の製造工場を作るまでの資金力はなかったためだ。そして、後に40年以上の長い付き合いとなる人物と出会う。世界的なホイールメーカーとして名高い「エンケイ」の鈴木順一社長だ。有名レーサーとはいえ、業界では新参者だった星野氏の依頼を快諾してくれたことが縁となり、現在もインパルのホイールはエンケイでのみ生産されている。

初の自社製品に期待も大きかったが、エンケイの会議室で自らデザインしたホイールの試作品(木型)を見て愕然とした。「全然格好よくなくて、売れないと思った。当時、エンケイさんの工場のまわりは田んぼだったんだけれど、そこでしばらく呆然としていた」という。

失意のまま会議室へ戻ると、星野氏は鈴木社長から思いがけない提案を受ける。「(エンケイで)使っていないデザイン案がたくさんあるから、気に入ったものがあれば使っていい」と言われたのだ。試しに、さまざまデザインが施された試作品が並ぶ部屋に入ってみると、中にピンッときたデザインがあった。それが、後に大ヒットとなった「D-01シルエット」の原型だった。

最初に手掛けたホイールの成功

ディスク面に十文字の切り欠きが入ったデザインで、サイズは14インチからスタートした。自身のブランド初の製品だけに、なんとか成功を収めたい星野氏。忙しいレーススケジュールの合間を縫って、自らサンプル品と名刺を持ち、北海道から九州まで全国の問屋などを営業でまわる。だが、新参ブランドのホイールに対する市場の反応は薄く、発売して2年間はほとんど売れなかった。

インパルが初めて製作したホイール「D-01シルエット」(筆者撮影)
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