今の起業家は松下さんや盛田さんに似ている 田原総一朗が目にした、スタートアップの最前線

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――なぜ、そうした変化が生まれたのでしょうか。

フローレンス代表の駒崎弘樹氏が興味深いことを言っていた。「自分たちの親の世代である全共闘世代は、体制を倒して新しい世の中を作るために、「ゲバ棒」や「火炎瓶」を手に戦った。ところが、自分たちにはそういう“敵”がいない。総理大臣は1年ごとに代わった。企業も不況でリストラばかり。言ってしまえば、総理大臣も大企業の社長も、隣のおじさんの延長に過ぎない」と。

つまり総理大臣も企業の社長も頼りにできない。ならば自分でやるしかない、ということのが、彼らが起業する理由だということだ。

彼らは高度成長時代もバブル時代も知らない。物心ついたときはすでに不況。だから「高度成長やバブル時代が再来してほしい」という発想がない。ゼロからどう作ればいいのかをつねに考えている。そういう意味では、戦後同じくゼロから事業を興したソニーの盛田昭夫さんや、松下電器産業の松下幸之助さんと似ている。

堀江貴文氏の世代との違いも、その過ちを目にした教訓から来ているのだろう。堀江さんはニッポン放送に敵対的買収を仕掛けるなど、荒々しい方法で新時代を切り拓こうとした。しかしその結果、旧世代から妬まれてしまった。それを見た駒崎さんをはじめ、今の起業家たちは、堀江貴文氏の過ちを繰り返すまいとしているのだろう。

――金儲けに対しても、考え方が違うようです。

おカネについてのスタンスも、松下幸之助さんや盛田昭夫さんと共通している。「カネは儲けようと思ったら儲からない。新しい事業を展開すれば、カネはあとからついてくる」という考え方だ。

LINEの森川亮社長がこんなことを言っていた。「『収益を求めているな』と気づいた途端、ユーザーは逃げていく。むしろより面白いこと、より意味があることを夢中に作っているときこそ、ユーザーがついてくる。カネはその結果として儲かる」と。

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