「コストをかけず、うちの製品を流行らせろ!」 山本晶・慶應大学ビジネススクール准教授に聞く

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まずは敗北感を味わえ!

塩野:ところで山本先生は英語でも論文を書かれていて、海外の学会でもお話しされていると思うんですけど、理系はともかく日本の人文学系研究者が海外でプレゼンスを発揮していくには、どうすればいいでしょうか。

山本:それは自分が知りたい(笑)。海外チャレンジは難しいですよ。世界の壁は厚いし、高いし。

塩野:どういうときにそう思うのですか?

山本:国際会議に行ったときですね。自分と似たような研究をしている人の人数の多さと、そのクオリティの高さに打ちのめされます。だから初めの一歩として、まず国際会議に行ってみて、圧倒的な敗北感を味わったらいいと思うんですよ。

塩野:なるほど! 敗北感を味わうのはいいですね。

山本:だってこの便利でステキな日本にいたら、わざわざハングリーに生きようとは思いませんからね。だからできるだけ過酷なところに行って、打ちのめされてくるのが早道だと思います。

塩野:ここはもうぜひ、太字にして強調したい。本当にそうですね。日本で守られているとなかなか海外に行かないですよね。

山本:すごくレベルの高いことをスムーズにこなす人たちが、熾烈な戦いを繰り広げているのを目の当たりにすると、開眼すると思うんですよね。

たぶん日本人があまり国際会議に行かないのは、日本で「先生、先生」って言われているのに、国際会議に行くとノーバディになってしまうから。ただの英語の下手な、謎の東洋人になるからだろうと思いますよ。プライドが高すぎるんでしょうね。

塩野:でも、若いときなら自分のダメさ加減を自覚することで発奮できるけれど、ある程度の年齢を超えると、無理な気もしますね。

山本:私も11歳でアメリカに行ったから「ダメでもともと」と思うようになったけれど、45歳だったらどうかわかりませんね。

あとは海外に打って出る方法として、私がすごく尊敬する方から言われたのは、とにかく英語論文の数を増やせ、成果を出せということ。「私、こういうアイデアがあります」だけではダメで、どんどん学術雑誌に投稿して、アクセプトされて、発表して、パブリッシュされる、その数を増やす。プロセスは関係ない、結果だと。

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