不満や苦情解消、鉄道会社のSNS「ウマい使い方」 迅速な情報提供が命、工夫次第で効果は絶大

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災害時には、対応に当たる主体へ凄まじい数の問い合わせ、さらには不満が寄せられる。内容も罵詈雑言に近いものが相当あり、除雪現場は雪と人と、両方を相手に戦うことになる。大雪との戦いを鼓舞すべきところに、背後から心理戦でダメージを受ける。

「SNSフォロワーの人数はたいしたことありません。しかし、それを見た報道機関や自治体が引用したりしてくれますので、地元ではネット使わない方にも情報が行き渡るようになりました。それが電話による言葉の暴力から自らを守ることにつながります。私自身で電話も多く取りましたが、ほとんどは『ホームページの内容から進展はあるか?』 というような簡単な確認のみ。『がんばって』という激励も多く受けまして、とても励みになりました。普段使っている人、沿線に住んでいる人からの激励はありがたいです」(伊東氏)

2018年の豪雪について、福井県の事後会議でJR西日本が「北陸方面不通によって雪の状況を知らない大阪で相当な苦情を受けた」と報告したという。利用者の苦情もわかる。「動かないなら行かない」または「動くなら行く」と決めたいけれど、「動くか動かないか、見通しも不明」では決められない。

「深夜の除雪現場だけでなく、鳴りっぱなしの電話にひとつひとつ対応する現場、駅などに訪れた人に対して列車が動いていないと説明する現場などは、ほとんど知られることのない業務です」(伊東氏)

過酷極める雪と人との戦い

福井県では2018年の豪雪を教訓に鉄道復旧の枠組みを整備した。鉄道の除雪は鉄道事業者の役割だ。しかし、軌道や踏切の除雪について道路管理者が協力する。軌道や踏切は、レールと道路の隙間に雪が詰まる。この部分は鉄道用の除雪車ではかき取れない。しかも、列車やクルマによって踏み固められ、堅い氷状になる。

その隙間は鉄道車両の車輪の凸部分、フランジが通るから、そこに異物があると車輪が乗り上がり脱線してしまう。分岐器の可動部分も入り組んでおり故障しやすい。これらはほぼ手作業で除去する。たいへんな労力だ。

このほか、えちぜん鉄道と福井鉄道が災害時の相互協力協定を結び、振り替え輸送を実施した。それぞれが厳しい台所事情にもかかわらず除雪車両を1台ずつ更新している。平成30年の豪雪で除雪車両が故障し、除雪作業が40時間も停まってしまったという反省からだ。

それでも課題は残る。自治体職員、鉄道職員とも、除雪現場への移動はクルマだ。しかし、除雪した道に一般車両が流れ込み、その渋滞によって除雪開始が遅れる。優先すべきは除雪と緊急車両だ。自治体は不要不急の外出は控えるよう、強く呼びかけるべきだ。

豪雪の被害は数字などで報じられる。しかし、雪と人との戦いは報じられない。雪の現場、その業務実態を豪雪に縁のない地域の人々は知らない。それは仕方ないとして、豪雪地域の人々も意外と知らない。理解を深めてもらうためにも、SNSで発信し続ける。

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