瀬戸際のみずほフィナンシャルグループが増資、背負った荷物と外したくびき

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 前田晃伸FG会長(右写真)は、みずほ銀行の顧客喪失につながった02年の大規模なシステムトラブルでも社長(当時)を辞任しなかった。みずほコーポレート銀行の斎藤宏頭取は海外投資で07年度から2年間にわたり7800億円もの損失を出し、個人的なスキャンダルまで飛び出したが退陣せず。昨年6月には2人とも、みずほ銀行の杉山清次頭取ともどもそろって3会長に収まり、ガバナンス不在を露呈。中堅・若手職員の士気を著しく下げた。

3会長退陣テコに改革急務

みずほは持ち株会社・FGの下に、ホールセール(法人分野)業務のみずほコーポレート銀行と、リテール(個人・中小企業向け)業務のみずほ銀行をぶら下げている。

グループ間で統合前の旧富士銀行、旧日本興業銀行、旧第一勧業銀行とポストを分け合い、旧行意識を温存したままの経営が統合後7年たっても続く。これで顧客本位のサービスができるはずもなく、3社長プラス3会長という計6人ものトップで迅速な意思決定ができるわけもなかった。

3人のくびきから解放されることで現在の3トップ、中でも塚本隆史FG社長がリーダーシップを発揮できるのか。塚本社長は、2バンク制の解消が必要ではないか、との指摘に対し、「箱の形は問題ではない」とし、「大切なのは共通のゴールをシェアできるか、組織の成員がチームスピリットを共有できるか、エクスキューズ(言い訳)を許さないアカウンタビリティ(説明責任)を維持できるか、この3点に尽きる」という。

主張はもっともだが、2バンクが旧日本興業銀行出身者を中心とする法人と2つの商業銀行出身者のリテールの文化の断裂を保持してしまっているのではないだろうか。2バンク制は資金効率も悪い。いずれにしても、市場からは思い切った抜本策が求められている。

6月には株主総会という試練が待っている。辞任する3会長はいずれも、金融庁が今期から義務づける1億円以上の役員報酬の個別開示に該当していたという。増資による利益の希薄化、今後の配当負担というツケを後代に残した3人は今後、みずほFGの特別顧問にそろって就任する。

塚本社長は「特別顧問の報酬は開示しない」としているが、「退職慰労金に代わって導入されたストックオプションを返上すべきだ」(金融庁関係者)という声もある。株主からは厳しい目が注がれるだろう。 
(大崎 明子 =東洋経済オンライン)

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