「自由にものが言えるから」自民党に入った政治家 わずか65日の石橋湛山政権をいま問い直す意味

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「自民党本部の8階ホールに歴代総裁の写真が掲げられているにもかかわらず、残念ながら、若い政治家は湛山先生をよく知りません。田中角栄先生も『あの戦争に行ったやつが、この世の中の中心にいる間はこの国は大丈夫だ。あの戦争に行ったやつがこの世の中の中心からいなくなったときが怖いんだ。だから、よく勉強してもらわなきゃいかんのだ』と言っておられた。平成は、戦後が終わった時代であり、今、戦争下でいろんな経験をした人たちがこの世の中の中心からいなくなろうとしています。それを考えると、今、湛山を学ばないと、これからの時代の生き方を間違えるような気が私はしています」

今、湛山を学ばないと、生き方を間違えるとは、いったいどういうことなのでしょうか。私のそんな疑問をよそに、3人の話は、このパネルディスカッションのテーマである保守政党のあり方についての討論が進んでいきます。

自由に発言できる政党を選んだ

口火を切った保阪氏から、現代の政党、保守と革新に対する提言がなされました。

保阪正康(ほさか まさやす)/ノンフィクション作家。昭和史の実証的研究を志し、延べ4000人もの関係者を取材してその肉声を記録してきた。1939年札幌市生まれ(撮影:尾形文繁)

「保守政治が1つの哲学なり、姿勢なりをきちんと持ったうえで、政治にあたってほしいと考えています。戦後の日本の言論空間の中で革新という言葉が独り歩きし、それがプラスのイメージになっているのが、日本の1つの落とし穴ではないか」

保守といえば、今までの文化や考え方、社会を維持していこうとするもので、現在の自民党がそれにあたり、その対角にある革新は、いい考えがあれば昔からのやり方は捨てて一からやり直そうとする野党。政治に疎い私には、この程度の基本的なことしか理解できていません(汗)。

保阪氏の提言を受けた船橋氏は、「保阪さんは、いまの保守に問題が多いと言いますが、自民党はどこでどのように変質したのでしょうか。石破さんは保守ですよね」と、石破氏に畳みかけました。

石破氏はすかさず、「私は保守です。でも、18年前に私が初めて小泉内閣で防衛庁長官になったとき、あるメディアに『あの極右の軍事オタクが防衛庁長官になるって怖い世の中だ』と書かれた覚えがあります(笑)。私は左翼の反日だと。だけど、保守というのは、自分は間違っているかもしれないから、相手の意見をよく聞かなくてはいけない。それがリベラリズムであり、保守の本質なのに、アメリカ寄りが保守、ソビエト寄りが革新とか言われてきた。そういう混乱した言論空間をいま、整理しておかないとまずいと思っています」と話しました。

いつの間にか、保守と革新それぞれの持つ意味が変わったのはなぜでしょうか。その問いに、まずは、保阪氏が「戦後の日本の政治の面白いところは、社会党や自由党などの政党がいろいろできて、どの政党に入ろうかと迷ったとき、大事にしたのは政党ではなく、人間関係なんですね」と答えると、船橋氏は「ただ、湛山は社会党だと自由にものが言えなくなる、というようなことを言っていますよね。だから自由党がいいのだと」と続けました。

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