目先の利益にとらわれず、原理を追求してきた

東芝機械の八木正幸取締役に聞く

 総合機械メーカーの東芝機械で、先行事例のない先進的機械の事業を進めてきたのが、八木正幸取締役だ。最近も、スマートフォンの液晶パネルや自動車の窓に使える樹脂を加工する装置、より明るいLEDを低コストで生産する機械などを世に送り出している。汎用的な商品ではなく、お客様のニーズに合わせた「一点もの」を開発し、ビジネスにするためにはどのような視点が必要か、徹底したお客様目線で考えられるのはなぜなのか、その発想の方法を聞いた。

研究志望だったのに酔った勢いで現場配属

三宅:もう2年くらい前になると思いますが、八木さんと初めてお会いしてお食事をご一緒したとき、あまりにも八木さんのお話が示唆深く面白かったので、食事中ずっとメモをとってしまいました。

八木:そのときの三宅さんのことは、よく覚えていますよ(笑)。とてもまじめな人なんだろうなと強い印象に残っています。

三宅:いやいや、私も食事中までメモを取りまくることは滅多にありません。「食事中ずっとメモ」なんて、むしろ失礼ですよね(笑)。でもそれほど八木さんのお話が、当時の私には強いインパクトがあったのです。そのときからずっと八木さんには、一度きちんとお話を伺いたいと思っていたので、ちょうどこの場をお借りして、今日はお話を聞かせていただきたいと思います。では早速ですが、大学での研究や東芝機械に入った背景などからお聞かせいただけますか?

八木:まず私の大学時代ですが、自動車が好きだったので、車のエンジンの研究をしていました。燃費効率のよさから、今後はディーゼルエンジンが伸びると思い、排ガス問題に取り組みました。その後、大学院では、そのために必要な技術として、今でいうインクジェットプリンタの技術の基礎的な研究をしていました。そしてその後、東芝機械に入るわけですが、自らの専門を考えると、当然、自動車メーカーという選択肢はありました。しかしながら、大企業で全体の一部の技術を担当するよりも、自分で何か「新しいもの」を作りたいという思いを強く持っていたのです。

そういう意味では、総合機械メーカーでもあり、当時で言うと極端に大きすぎなかった東芝機械は、私にとってはたいへん魅力的に映りました。東芝機械にはいろいろな機械がありましたから、その中には、自分のやりたいもの、向いているものがあるのではないかと思ったのです。ちなみに、実家が兼業農家だったこともあり、地元の静岡県に戻れる会社というのを意識したのも事実です(笑)。

三宅:入社後すぐは、どういう部門に配属されたのですか?

八木:実は、もともとは研究部門を希望していました。ちょっと面白いエピソードなのですが、入社後すぐに、新入社員を全員集めた面接のような形で、順番に希望部署などを発言していく場がありました。会社側からは新入社員がリラックスして言いたいことを言えるようにと、缶ビールがふるまわれたのです。私は「八木」なので、最後の方の発言だったのですが、見ていると誰もビールに手を出さないのです。そこで酒好きの私は、自分の分はもちろんのこと、ついつい人の分まで飲んでしまったのです(笑)。そして、酔った勢いで、「現場を知らないと、いい研究はできません。現場に行かせてください!」と言ってしまいました(笑)。そしたら人事部長が「八木君はとてもいいことを言うじゃないか」となって、押出成形機の事業部に配属されちゃったのです。誤算でした(笑)。

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