中国に負けないベトナムから何を学ぶか(上) ベトナムとのビジネスに比べたら、中国は超簡単!

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 この中でも最もマスコミを騒がせているのが、南シナ海での石油掘削が原因で起きた、ベトナムの大規模反中デモである。中国人駐在員が亡くなり、関係のない日本や韓国の工場にも影響が出たのは、記憶に新しい。

だが、いくら中国の経済力が強大になったといっても、隣接国すべてを敵に回せば、大国といえども、持つわけがない。そもそも、賢明なやり方ではない。中国の海洋進出は、国内の利権絡みの権力闘争の中で出てきた話ともいわれるが、昔から中国とはビジネスで長い間つきあいのある私にいわせてもらえるなら、なぜ中国のような思慮深い知恵の国が、近隣国家(特にベトナムに対して)を敵に回すような政策にこだわるのかが、疑問なのだ。

なぜベトナムは、強いのか?

とりわけ、今回、中国はベトナムを怒らせてしまった。長い歴史の中で、中国とベトナムは何度も戦争を繰り返してきた。数え方にもよるが、主要な戦いだけで、歴史的には15回以上もあり、ベトナムが負けたことはほとんどないに等しいのだという。

極端にいえばだが、いったん守勢に回ったように見えても、我慢強く抵抗を繰り返し、最終的には中国を跳ね返してきたのがベトナムの歴史といっても過言ではないのではないか。私の知る限り、ベトナムは中国からの侵略に対しても、敵を中へと呼び込んで、「ゲリラ戦」に持ち込み勝利を得るという戦いが多い。いわば「アウェーの戦い」はそれほどでもないが、「ホームの戦い」には滅法強いのがベトナムなのである。

軍事力や総合的な戦力からすると、中国の方が圧倒的に強力なのに、組織力や戦闘力から見るとベトナムの方が、まとまりがあるように思う。1979年の中越戦争の時も圧倒的に軍備では勝っている中国に対して、ベトナム戦争で米軍やロシア軍が残していった戦車や武器などを活用して中国軍に勇猛果敢に抵抗したと聞いている。そうした意味で、長い歴史の中で戦いを繰り返している中越関係は、日中関係とは比べ物にならないほど複雑な国家関係だと思う。

不謹慎な言い方で恐縮だが、ベトナム人は対中国では「喧嘩慣れ」しているので、中国に対しては容易には屈しない。もしかしたら、日中関係は、今後ベトナムと中国の関係悪化の影に隠れ、幸か不幸か、望む、望まないは別にして、結果として「棚上げ」になって行くのではないかとも、思うほどだ。

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