(第32回)【変わる人事編】2010年卒採用の異変。求人倍率1.62なのに最悪の就職内定率

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●史上最悪だった2000年卒よりさらに低く、9割を切りそうな2010年4月の就職率

大卒求人倍率と大学等新卒者の就職(内定)状況の比較
※リクルートワークス研究所『大卒求人倍率調査』と文部科学省・厚生労働省『大学等卒業者の就職状況調査』より制作。
※2010年4月1日現在の数字は5月に発表予定。
 採用活動は卒業年の前々年10月の就職ナビのオープンでスタートし、前年5月の連休明けくらいに実質的に終了する。ただしこれは大企業の採用を中心にしたシナリオだ。この段階で採用を打ち切る大企業も確かにあるが、中堅・中小企業の採用は続いている。キャリアセンター側から見れば、連休明けに内定している学生は4割、多くても5割程度だろう(大学や学部によっても変わる)。

 文部科学省と厚生労働省の『大学等卒業者の就職状況調査』は2カ月おきに4回の内定率を調べたもので、大学の把握しているデータをもとにしている。10月、12月、2月、そして就職する4月1日現在の内定(就職)率だ。表を見ればわかるように2カ月おきに10%前後上がっていく。そして最終的には9割以上が就職してきた。

 ただし2010年卒採用では異なる展開になっている。なんと求人倍率が0.99だった2000年よりも低い。今年の2月1日段階でも80.0%である。4月1日現在の数字は5月に発表されるが、9割を切るかもしれない。これは異常である。

 内定率が伸びない理由は学生の大手企業志向かもしれない。中堅・中小企業の人材充足感は薄く、2010年卒でも満たされていないからだ。ただ学生の大手企業志向は今に始まった話ではない。いつの時代も自分がなじみ、よく知っている企業は人気があり、知らない企業は敬遠する。実際のデータも裏付けている。ディスコが『日経就職ナビ2011 就職活動モニター調査』(2010年3月)を発表しているが、就活の中心にしている企業規模が興味深い。就職氷河期が続いていた2005年卒では「トップ企業、大手企業を中心に活動」する学生は3割台。2006年卒から4割台になり、2009年卒、2010年卒では5割以上になっていた(2011年卒では「大手中心」がふたたび減少している)。

 ただいつの時代も「中堅中小中心」「規模にこだわらない」学生は5割前後いる。だから、2010年卒の内定率が低い理由が大手企業志向というのは根拠が薄弱だと思う。

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