日本通運の今期は荷動きが急速に改善し連続増益、懸念された宅配事業の人員の戻りも限定的か

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日本通運の今期は荷動きが急速に改善し連続増益、懸念された宅配事業の人員の戻りも限定的か

日本通運の今2011年3月期業績は面白い展開になりそうだ。何しろ足元の荷動きの戻りががすごいことになっている。「リーマン・ショック前との比較で足元8割まで戻った荷動きは9割まで戻る」(財務担当取締役の三井田實常務執行役員)というのが今期計画の前提だが、荷動きの地合いが異常と言えるまで強い。

三井田常務によれば、国際航空貨物の輸出額が「前年同月比で09年12月に17%増、10年1月に48.7%増、同2月に54.7%増、3月に69.2%増となっている」(三井田常務)。航空貨物全体では、今期は金額ベースで9.7%増(上期17.7%増、下期2.7%増)を見込むが、これはあくまでも「堅く見ている」(三井田常務)からに過ぎず、足元の荷動きの強さからすると、期初から上振れる公算が出ている。金額ベースで今期21.4%増(上期23.5%増、下期19.4%増)を見込む海上運送の荷動きも、2月は前年同月比11.9%増、3月が同4.5%増だった。

前10年3月期は宅配便事業を切り出した影響が売上高で800億円あったほか、リーマンショック後の荷動き減、自動車輸出関連の輸出梱包取り扱い減や、原油価格下落による石油販売(子会社の日通商事が担当)の減少で14.2%の減収となった。しかし、燃料費・運送費・外注車両費の減少で営業利益は12%の増益だった。

「宅配便を切り出したから増益となったのではないか」との見方に対しては、国内事業本部長兼管理本部長兼小口貨物事業推進本部長の渡邉健二副社長は「切り出したから利益が上がったということではない。上期に相当コストを削減したのが下期に効いてきたからだ」と強く否定した。

これまで、日本郵政と依然交渉中の日本郵政との宅配合弁・JPエクスプレスの7月清算・日本郵便への吸収に伴う約6000人の出向社員の取り扱いが今期業績を見通す上での懸念材料だったが、この懸念は大きく後退している。日本郵政側が主張している「サービスレベルの維持」を前提にすると、日通によれば、日通に戻ってくるのは3割の1800人。今期中に定年退職を迎える約1400人から新卒入社の約970人を引くと、今期は約430人の自然減が見込めるほか、残り約1370人は「期間・臨時社員の調整で吸収可能だ」と三井田常務は断言する。
 
 なお、高速道路料金の値上げを今期計画に織り込んでいないのは、「高速道路料金が上がればお客様に運賃値上げをお願いするし、高速道路料金が下がったら運賃値下げを要求されるもので、前回下がったときも影響は軽微だった」(三井田常務)から。

「東洋経済オンライン」では、速報値として今期営業益予想を会社計画と同水準に置くが、これはあくまでも今月中に予定している個別取材までの暫定的なものだ。これまで頭の上に重くのしかかっていた懸念材料が大きく後退しており、荷動きがさらに強くなれば、表記数字から増額の余地は十分にあると「東経オンライン」では見ている。
(山田 雄一郎)


《東洋経済・最新業績予想》
(百万円)    売 上  営業利益 経常利益  当期利益
連本2010.03  1,569,633 37,535 37,753 12,566
連本2011.03予 1,606,000 45,500 50,500 25,000
連本2012.03予 1,760,000 50,000 55,000 27,500
連中2009.09  764,179 15,771 11,575 4,250
連中2010.09予 790,000 19,500 22,000 8,000
-----------------------------------------------------------
         1株益¥ 1株配¥
連本2010.03  12.1 10 
連本2011.03予 24.0 10 
連本2012.03予 26.4 10 
連中2009.09  4.1 5 
連中2010.09予 7.7 5 
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