トヨタ「カローラ」、セダン不況でなぜ売れる? HVにワゴン、新旧併売とトヨタの心意気が鍵

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12代目にフルモデルチェンジしても併売されている前型のカローラ アクシオとカローラ フィールダー(写真:トヨタ)

セダン人気に陰りが出ているといわれるが、拙宅の近所には、ハイブリッド専用4ドアセダンだった「SAI」に替えて、カローラ4ドアセダンを購入している家がある。駐車場に止められた大きさは丁度よく代替できた様子で、なるほどそういう買い替えの仕方があるのだと納得した。さらに販売台数の内訳を詳細にみていくと、じつは前型の「カローラアクシオ(4ドアセダン)」と、「カローラフィールダー(ステーションワゴン)」がなお併売されており、カローラ販売台数の24%ほど(2020年総計)を占めている。

近年の上位人気車種の動向をみても、5ナンバー車の人気が根強いことがわかる。そしてこれまでカローラに乗り替え続けてきた人にとって、5ナンバー車であることの意味は大きい。そういう消費者にとって、前型とはいえ5ナンバー車のカローラが販売され続けているありがたみがあるだろう。しかし逆に、自動車メーカーにとっては生産工場の設備はもちろん、整備上の交換部品などについても、新旧あわせて揃える負担は大きくなる。トヨタの顧客を思う心が半端ではない側面を覗かせることにもなる。

車体の大型化も限界になりつつある

新車開発において、前型に比べ車体を大きくし、ひとつ上の車格の価値を提供することは永年行われてきたことだ。しかし、ことに2000年以降は大型化が異常といえるほど進み、まさしく格上の車種と見分けのつかないほど大型化される事態になっている。欧州車でその傾向が顕著であり、国内に輸入車を導入するインポーターにそのわけを聞いても、本国のメーカーはそれほど不便さを意識していない様子だとの答えであった。

2020年11月6日に発売されたルノー「ルーテシア」(写真:ルノー・ジャポン)

ところがここにきて、フランスの小型車であるルノー「ルーテシア」がわずか1cmとはいえ前型に比べ全長を短くした新車を発売した。ルノー・ジャポン広報によれば、フランスではいよいよ顧客が大型化に耐えきれなくなっているとのことである。

欧州では、路上駐車が許され、代表的なのはパリの市街で、前後のバンパーを接触させながら路上駐車する様子がひとつの風景にもなっている。それほど窮屈な路上駐車の仕方をしてきた人々が、ついに車体が大きくなることに反対の声をあげはじめたのだろう。全長が長くなったぶん、その道路に駐車できる台数が減っていくのは道理だ。いよいよ欧州車の拡大化も限界が見えはじめてきたといえるのではないか。

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