新横浜の地下深く、人知れず進む巨大鉄道工事 22年度下期開業「相鉄・東急直通線」現場ルポ

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地下への入り口付近は地上から掘る箱型トンネルだが、その後は単線トンネルを2本掘る。長さ1.1kmの綱島トンネルである。

トンネルを2本にしたのは、東横線の高架の地下にある基礎部分を避け、両側の側道の下にトンネルを掘る必要があったからだ。綱島トンネルの直径は6.8m。直径9.5mの新横浜トンネルとくらべると小ぶりだが、トンネルを2本掘るためコストは割高となる。

2本の単線トンネルは、まず2019年11月に新綱島から日吉方面に向かってシールドマシンによる掘削が始まった。マシンは400トンもの重量があるため、折り返し地点では半日かけて180度回転し、引き続き新綱島に向かって2本目のトンネルの掘削を開始。

シールドマシンは取材当日に新綱島駅の直前に達し、2本目のトンネルの予定工事を終えたという。残る少しの部分を掘削すれば、新綱島駅まで貫通することになる。

新綱島駅も地下で建設中だ。綱島トンネルが2本の単線トンネルとなることから、ホームは島式の1面2線となっている。

地上は工事現場となっているが、再開発して複合商業施設が建設される予定。高層棟は地上29階建てのマンション、低層棟は商業施設のほか、港北区の区民文化センターとして、ホールやギャラリーを設ける計画。2020年11月に着工。2023年10月竣工予定だ。東横線の綱島駅と歩行者デッキで結ぶ構想もあり、実現すれば両駅との行き来が便利になる。

新横浜駅、開業後はどうなる?

東海道新幹線の開業以前は田園地帯だった新横浜は、再開発によってオフィス街へと変貌した。また、横浜アリーナや日産スタジアムのアクセス駅でもある。新線の開業に伴い、再開発がさらに進む可能性もある。東急の高橋和夫社長は、「新駅の真上や周辺では、少なくとも何らかの再開発がある」と話す。

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巨大な新横浜の地下駅は、ホーム以外の階には空間が目立つ。「改札口や駅事務室が設けられるので、完成後はそれほど広いと感じられないのではないか」と、JRTTの担当者は話すが、あまりの広さに、営業開始時には商業施設などが入居するのではないかと思えてきた。

そこで、営業開始後に駅を管理する東急と相鉄に問い合わせてみたところ、「現在協議中で具体的なことは何も決まっていない」(相鉄)、「具体的なことをお話しできるのは少し先になる」(東急)という回答が返ってきた。

現在は決まっていないにせよ、協議をしているということは、何らかの施設が開業する可能性はあるということだ。それはショッピングモールのようなものかもしれないし、コロナ禍を踏まえてということであれば、テレワーク用のシェアオフィスかもしれない。新幹線で出張するビジネスマンにも便利な場所となりそうだ。

首都圏の駅を中心とした再開発で表舞台に立つのは鉄道会社やデベロッパーだが、その土台作りをJRTTが行っている。日本の都市開発を支える、文字通り「縁の下の力持ち」だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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