ブルボン「プチ」が巻き込まれたハラル騒動 "豚エキス使用"がインドネシアで大炎上

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別の記事によれば、現地メディアの記者が今回の回収騒ぎについて、新潟のブルボン本社に電話で問い合わせたところ、本社はこの騒ぎをよく把握していなかったと報じた。実際には、ブルボンが日本の輸出代理店から連絡を受けたのがほぼ同時であり、事態がよく解明されていなかったことも事実だろう。

10数年前には同じインドネシアで、味の素が豚由来の酵素を使用したとして、大きな事件となった。この時も、本社が事態の解明に乗り出す前に、逮捕者を出すまでに至った。騒動が大きくなった背景に、「世俗化を嫌うイスラム保守派の反発が予想以上に強かった」というものがあった。また、消費者連盟も「イスラム基準を満たした食品と偽って、消費者を欺いた」と抗議をした影響も大きい。

今回は早いうちにYLKIなどが「流通の問題」との見解を表明しているので、味の素事件のようにはならず早晩、事態は収束に向かいそうだ。だが、仮にCV.ローマやインドマレットの失策だとしても、一般消費者の記憶にいちばん鮮明に残るのは、“ブルボンという会社のプチポテト”が禁を犯したということだ。

日本人は食品の品質に関しては世界一厳しいなどといわれる。だが、ムスリム市場には単に品質だけの問題ではなく、信仰上の約束という難事が加わる。

豚皮の使用も訴訟に発展

これはシンガポールでの出来事だが、つい6月にも、あるムスリムが半年間、毎日履いていた靴をある理由で、全額払い戻しするよう訴えた。その理由とは、靴の裏当てに“豚皮”が使用されており、店側がその真実を隠して販売したからだという。その靴は彼女の足にぴったりで、履き心地も非常に快適だったにもかかわらずだ。

日本人の感覚からすれば、何も問題のない商品を半年間使用したあげく、払い戻しさせるのはクレーマーとも取れる。結局、半年間は使用していたので払い戻しは半額となったようだが、彼女の言い分は認められている。イスラム圏では、ことほどさように豚に関するタブーは罪深いのだ。

これまで日本人はイスラム圏やムスリムについて、それほど深く学ばないままきた。ムスリムにとって、信仰とは生活そのものであるという。これからムスリムを国内に迎えるに当たっても、さらなる理解を深めなければ、同じようなトラブルは今後も続発する可能性が高い。

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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