東急、豪華列車戦略「北海道進出」勝負の2年目 2本目は?他地域での運行は?担当者に聞く

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東急では行きはザ・ロイヤルエクスプレス、現地で宿泊したあとの帰りはサフィール踊り子という旅行商品も販売しており、好評だという。「複数の列車が走っているのが伊豆の魅力。JRさんとターゲットが必ずしも一致しているわけではないので、相乗効果になっているというのがわれわれの認識」。

「ザ・ロイヤルエクスプレス」を担当する東急交通インフラ事業部の松田高広担当部長(記者撮影)

JR東日本と連携ができているのであれば、ザ・ロイヤルエクスプレスもサフィール踊り子のように東京駅、新宿駅といった都心に乗り入れてもよいのではないか。この点については、「そのようなニーズがあるのかJRと検討しながら、今後考えていきたい」という。

昨年夏には北海道で運行した。列車は札幌―池田―釧路―川湯温泉―知床斜里―北見―遠軽―旭川―札幌というルートを走り、乗客は列車とバスを併用しながら3泊4日の道程で北海道の自然と食を堪能する。列車を運転するのはJR北海道だ。

もともとは2016年ごろ、道がJR北海道に豪華観光列車の導入を提案したのがきっかけ。経営難にあえぐJR北海道に豪華列車を造るだけの資金力はなく、国が2018年、JR北海道の線路の上に他社の観光列車を走らせるという構想を打ち出した。

JR北海道との協力体制

古くから北海道との結びつきが強い東急は、このアイデアに興味を示した。夏の期間中はJR東日本が列車を増発するため、ザ・ロイヤルエクスプレスを伊豆エリアで運行させる余地が少ない。遊ばせておくくらいなら北海道で活用したほうがいいという判断も働いた。

国が意図していたのは東急が第2種鉄道事業者として鉄道の運行を行うというものだったが、非電化路線での運行経験がない東急は安全上の理由から難色を示し、伊豆と同じスキームで東急が旅行商品の企画・販売、車内サービスを行い、運転はJR北海道が行うという形に落ち着いた。非電化区間も走るため、JR北海道の機関車が車両を牽引する。

JR北海道は運行に徹している。いわば裏方だ。しかし、「JR北海道さんにはものすごく配慮していただいている」と松田部長は話す。車内で食事を取っているときはできるだけ揺れないように運転する、沿線の人たちが手を振ってくれるような場所では速度を落とすといったことだ。JR北海道は運転を通じた「おもてなし」を行っているのだ。

運転の取り扱いは基本的には試運転を通じて、東急とJR北海道が打ち合わせて事前に決めたことだが、打ち合わせしなかったのに速度を落としてくれたといったこともあったという。

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