鳩山首相はいまこそ「歴史的使命」を思い起こすべし

鳩山首相はいまこそ「歴史的使命」を思い起こすべし

塩田潮

 「政治とカネ」の問題で、検察審査会が先の検察当局の判断に対して、鳩山首相は「不起訴相当」、小沢幹事長は「起訴相当」と議決した。 

 小沢氏は続投を表明したが、このままでは鳩山内閣の支持率はさらに下落し、参院選を控えて危機的状況に直面するだろう。

 小沢氏の心中を推測すると、「事件は検察の決定で決着、検察審査会の議決があっても答えは不変、現体制のまま参院選突入、野党側の弱体化で敗北回避、政権維持」という強気の中央突破作戦と思われる。敵方の自民党も、自分がいる限り民主党の攻略は不可能と見て「小沢追放」を狙っているのだから、なんとしてもこの闘いを制しなければ、というのが小沢氏の考えだろう。

 一方の鳩山首相は、どん底の苦境にもかかわらず、妙に落ち着いているのが気にかかる。無類の楽天家か、それとも空威張りなのか。普天間問題で勝算や秘策ありという情勢ではないが、もしかすると、「自身の事件は解決、普天間問題も5月末決着、いまが底、支持率反転、再浮上」という楽観論に立っているのかもしれない。

 鳩山政権は小沢問題と普天間問題を抱えて立ち往生しているが、いま問われているのはこの2つの課題の処理と決着といった個別の問題ではない。昨夏の総選挙で「政権交代実現」を選択した多くの国民が、選択の是非を問い直さなければと思い始めている現状こそ、民主党政権の最大の問題点である。

 政権交代の実験は失敗だったと国民が認めれば、残る選択肢は、自民党政治への回帰か、政界再編による流動化と不安定政治か、あるいは政治不信の拡大と官僚主導復活による中央集権体制の再現という道だ。議会制民主主義への失望という結果を招来させれば、鳩山政権の罪は途方もなく大きい。

 そうならないためにいま何をすべきか、鳩山首相は最優先で考えなければならない。その視点に立って小沢問題と普天間問題に対する回答を導き出すのが首相に与えられた歴史的使命である。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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