(第31回)【変わる人事編】「大卒求人倍率調査」から見えてくる就職の風景

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 1980年代に入ると日本の急成長が始まり、新卒市場も過熱していく。そして、巨大化した就職情報誌『リクルートブック』に象徴されるように、民間の就職情報会社の力は急速に強くなっていく。この頃に圧倒的に大きかったのは、リクルート。かなり離されて毎日コミュニケーションズ、ディスコ、ダイヤモンド・ビッグ社、ユー・ピー・ユー、人材開発企画センターなどが競い合っていた。

 採用市場は景気との相関関係が強く、バブル経済が絶好調の1980年代後半には「優秀な学生1人を採用するのに300万円」「上位校理系採用には500万円」という営業トークが使われたこともあったし、実際にもそれくらいの予算が使われていただろう。特に景気が良かったのは金融業界。理系学生が金融業界などに就職することを「文転」ということがあるが、文転は1985年ごろから多くなっている。

 当時、日本の株価は一本調子に上がっていた。ピークは1989年12月29日の日経平均株価3万8915円。1980年代の株価は日米で同じような動きを示しており、日本が1万円でアメリカは1000ドル、2万円で2000ドル、3万円で3000ドルという相場だった。しかし日本は最高値から株価は下がり始め、バブル経済は破綻する。アメリカはIT産業が勃興し、さらに上昇し続けた。

 現在も日米の株価には相関関係があり、大ざっぱに言えば1万円に対し1万ドルという比率だ。20数年前に比べると10倍の違いがある。1990年以降の「失われた20年」に日本とアメリカの株価はこれほど大きな差異を示しているのだ。

●1987年卒からのデータが公開されている「大卒求人倍率調査」

 さて1980年代末と言えば、いま就職活動を行っている学生たちが生まれた時代だ。この頃からの日本の新卒市場を知るための基本資料がある。リクルートワークス研究所が毎年4月に発表している「大卒求人倍率調査」だ。1987年卒からのデータが公表されており、単に求人倍率だけでなく企業のバイタリティを知ることもできる興味深いデータだ。

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