富士通は信用回復できるのか、露呈した企業統治への甘い認識

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 もちろん富士通にも、企業統治に関する基本的ルールはある。会見でもたびたび引用されていた「FUJITSU Way」がそれだ。ホームページにも開示されている体制図を見ると、最上位に株主総会があり、その下に取締役会、監査役会、会計監査人などがある。そして経営執行機能の最上位にある代表取締役を、監査役会が監査し、取締役会が選任、解任、監督する。

だが、野副氏本人、富士通側双方が認めているとおり、野副氏の辞任は、取締役会ではない、非公式な会合で決められた。野副氏は、数人の取締役、監査役から1時間にわたってこの場で辞任か、取締役会での解任か、を迫られ、やむなく辞任を選んだのだという。
 
 この直後に行われた取締役会には、「すでに取締役を辞任しているので」野副氏は出席させてもらえず、突然辞任するに至った真の理由も説明されていない。辞任を追認するためだけの、形式的なものにすぎなかった。

富士通側は、非公式会合に至る前に、野副氏以外の取締役9名のうち6名、つまり過半数の了解を得ていたとし、「いきなり取締役会にかけて解職するよりも、穏当な措置と考えた」と言う。しかし、いかに言い繕おうとも、公式の取締役会が機能していなかった点に関し、疑念を差し挟む余地はない。

さらに、当初公表された野副氏の辞任理由は「病気治療のため」だったが、騒動が表ざたになった3月6日には、「好ましくない風評のある企業との関係」に訂正された。この件では、東証から開示の適正性に欠けるとして厳重注意を受けている。

その一方、富士通は4月14日の会見で、野副氏の辞任(=解任)は「17万人の社員を抱える企業トップとしての適性に問題がある。経営判断だ」と繰り返している。

では、東証への虚偽の報告を指示した現取締役たちは、自らをどのように考えているのだろうか。

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