地下鉄延伸に黄信号「日本式インフラ輸出」の罠 ジャカルタMRT、第2期区間の入札不調が相次ぐ

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実はもう一つ、ルバックブルスからさらに南伸する「フェーズ3」と呼ばれるインドネシア側の独自計画が存在する。公共交通空白地帯のため、より多くの需要が見込めるが、隣接するバンテン州にまたがるため、費用負担の問題などから進捗が見られない。そこで、突如フェーズ4の存在を明らかにし、2022年着工・2027年完成との計画を示した(のちに2023年着工・2030年完成に修正)。

基本設計すらできていない中で来年着工とはあまりにも急な話であり、フェーズ2への入札参加を促すため、日本企業へ追加契約の可能性を示唆しているとも感じ取れる。一方、コロナ禍で減少している利用者確保のためにも早期の路線延長は不可欠であり、日本企業にこだわらず迅速に着工できる区間として設定したとも考えられる。

そして、最後に工期の問題である。フェーズ1の受注業者は大統領任期に合わせ、当初のスケジュールを2カ月も前倒しした2019年3月開業という無理難題を押し付けられた苦い経験がある。フェーズ1がジョコウィに始まりジョコウィに終わったというのは以前の記事(2019年4月21日付記事「ジャカルタ地下鉄開業、薄い『日本』の存在感」)でも紹介した通りだが、フェーズ2も同様になる可能性が極めて高いということである。起工式で宣言された南北線の全線開業は2024年。ジョコウィ大統領2期目の任期切れのタイミングである。

そこにコロナ禍が直撃し、順調に受注業者が決まったCP201ですら完成予定は2025年4月に延期された。CP202、CP203については、結果的には入札が流れたことで、MRTJ側が開業を2027年まで遅らせると発表している。こうなれば、さすがに大統領の任期までに完成させよという声は出ないだろう。納期遅延は賠償の対象である。つまり、このリスクを回避するために、あえて誰も入札しなかったという見方もできる。

フェーズ2をめぐる不安要素

現在、CP202については入札から随意契約に変更することで業者を募っている。予算の範囲内ならばより高額での受注が可能である。「ジャカルタ都市高速鉄道事業(フェーズ2)(第1期)」に対しては700億2100万円を上限とした円借款が結ばれている。これが主にCP201からCP203までの範囲と推測されるが、すでにCP201(2駅・約2.7km)が340億円で受注されていることを考えると、残り区間の5駅・約3㎞の区間に残されているのが360億円というのは、やや心もとない。果たして名乗りを上げる日本企業はあるのだろうか。

フェーズ2をめぐる不安要素はこれだけにとどまらない。これまで「フェーズ2A」と紹介してきたからには、「フェーズ2B」が存在する。そして、その区間の土木工事が前出の入札パッケージの中で欠番となっているCP204、というカラクリである。

KCIジャカルタコタ駅とカンプンバンダン駅の間に広がる国鉄遊休地。一部はすでに民間デベロッパーに売却されているという話もある(筆者撮影)

当初、JICAによる設計段階ではフェーズ2Bは存在しなかった。代わりにコタ駅の先に、車両基地が建設される予定だった。これは、KCIジャカルタコタ駅とカンプンバンダン駅の間に広がる国鉄遊休地を流用することを前提としていた。しかし、遊休地を活用したコタ地区の再開発を企む国鉄KAIとの交渉は難航し、最終的に2016年に決裂した。

そこで、新たな車両基地用地の選定が必要となり、コタからカンプンバンダン(マンガドゥア)を経由し海岸方面に進み、アンチョル海浜公園近くまで延伸する計画が持ち上がった。海浜公園一帯は州政府が管理するレジャースポットとなっており、広い用地を確保するには好都合である。ただし、元の設計計画に2B区間は含まれておらず、現状まったく白紙の状態である。円借款でカバーされているのもコタまでである。

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