吉野家三度目の正念場、屋台骨の牛丼が独り負け、子会社も軒並み苦戦

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 理由は、一貫してこだわってきた米国産牛肉にある。BSE(牛海綿状脳症)による輸入禁止時も「牛丼の味を均質に保つため」(安部社長)、豪州産などに切り替えず牛丼販売の一時休止を選んだ。

06年に輸入再開となったものの、日本政府は月齢20カ月以下のルールを導入。この影響で供給量はBSE発生前を大幅に下回っており、価格も高止まりが続く。

一方、ライバルの転身は早かった。BSE発生時に米国産の使用を取りやめて販売継続した松屋は現在、米国と豪州産を使用。すき家は豪州とニュージーランド、メキシコ産を使っている。米国産牛肉と比べると、約3分の2まで原価を抑制できているという。価格競争力で吉野家は不利な状況にある。

屋台骨の牛丼のみならず、グループ子会社も厳しい。BSE発生時の牛丼販売休止を教訓に、安部社長はM&A戦略へと舵を切った。“脱・一本足打法”を目指して事業多角化を進めたが、シナジーどころか重荷となっている。最たる例は、07年8月に「180円ラーメン」の運営会社を事業買収して設立したアール・ワン。一度も黒字化しないまま、09年6月に撤退を決めた。

08年に子会社化したステーキチェーン「どん」も悩みのタネだ。昨年8月に13店舗でO−157による食中毒事故が発生し、客足がみるみる遠のいた。不採算店の減損も重なり、2度目の債務超過に転落している。

持ち帰りすし店の「京樽」も回転ずしなどに客を奪われ、既存店が前年同月比約1割の減収が続く。唯一、健闘しているのが讃岐うどんの「はなまる」という苦しい状況にある。

「過去の買収戦略は、大衆向けの外食ならよいという考えで対象範囲を広げすぎた」(吉野家ホールディングスの加藤建司専務)。業態がバラバラでは、グループ経営の力を発揮するのは難しい。

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