ドコモ、「アハモでギガホ勧誘」景表法違反か おとり的に活用、組織的に店舗に手法指示

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ドコモのこうした手法に見え隠れするのは、アハモによってリテラシーが高い利用者からの収入が減る分を、リテラシーが低い利用者を騙してでもなるべく大容量のプランに加入させて補おうという意図だ。それを裏付ける、ある幻となったドコモの代理店施策がある。

ドコモが代理店に対し、来年度から大容量プランの獲得率評価を導入する旨を示していた内部資料。ドコモは施策の表面化を恐れてか急遽取りやめた(記者撮影)

実は、ドコモが2021年2月25日に開いた代理店向けの会合で配布した資料には、新年度(4月1日以降)から大容量プランの獲得率を、代理店へのインセンティブ評価の重要項目とする旨が記されていた。ドコモはここ数年、こうした施策は行ってこなかった。

しかし、ドコモの代理店関係者によると、3月下旬の土壇場で、この施策の中止が急遽決まったという。3月2日に開かれた総務省の有識者会議・消費者保護ルールの在り方に関する検討会では、「販売代理店の在り方」が重大議案の1つに設定された。総務省は携帯電話各社の代理店施策に関心を寄せ始めており、ドコモの直前撤回の背景にはこうした事情もありそうだ。

ギガホなどへの乗り換え獲得が優良事例に

ドコモショップでの不適切販売を助長しかねない大容量プラン獲得率の成績評価の導入は回避されたが、懸念されるのはこうしたやり方をしようとしていたドコモの企業姿勢そのものだ。

ドコモは2020年12月、親会社のNTTの澤田純社長が同社から送り込んだ腹心の井伊基之氏が社長に昇格した前後から、独占禁止法違反にあたる代理店への頭金0円の強制など、手段を選ばない方法で契約者数の増加を図っている。

ドコモは今年2月、2020年12月のMNPによる乗り換えの転入数が、他社への転出数を12年ぶりに上回ったと発表した。ドコモは「アハモを発表したことで既存のドコモ利用者の流出が少なくなった」などと説明してきた。

だが、実際には、アハモフックによる流入の増加などが大きく寄与していたようだ。ドコモの代理店向けの資料では、アハモフックを使ってギガホなどへの乗り換え獲得で12月に好成績を挙げたショップが「優良事例」として多数掲載されている。

井伊社長は昨年12月3日の就任直後の会見で、アハモ開始による減収影響を問われた際に「その分をどうやって埋めるのかが私の責任だ」と述べていた。その答えの1つがこのような手法なのだとすれば、ドコモを信頼する利用者への裏切りというほかはない。

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「わざとスマホを壊して!」ドコモ代理店、驚愕営業の実態
au、表向き値下げでも「面従腹背」の衝撃実態
ドコモ担当者「頭金0円を代理店に指示したつもりはない」
ドコモ、代理店に「頭金0円強要」で独禁法違反か
奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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