「サッカー日韓戦」コロナ下の開催に踏み切る訳 「バブル」形式の対策、有観客試合の実績を作る

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加えて言うと、代表戦のない環境が常態化してしまうと、一度離れたファン・サポーターが戻らなくなる恐れがある。

昨夏から観客制限下での開催に踏み切っているJリーグでも客離れが目立つ。FC東京などでは、2020年のシーズンチケット購入者1万人のうち、再開後の非来場者が4割に上ったというが、それは他クラブにも共通する点。代表人気が停滞気味と言われる今、協会としてはその傾向に歯止めをかける必要がある。

今回は7万2000人収容の日産スタジアムに1万人の観客しか入れないが、それでも有観客試合の実績を作ることに大きな意味があるのだ。

2週間の自主隔離期間なしの試合運営

これまでJリーグはスタジアムの安心・安全を担保し、遠のいた観客を呼び戻すべく、元日の天皇杯決勝(東京・国立競技場)などビッグマッチ開催時に観客席やトイレ、コンコースなどでの二酸化炭素濃度を計測。監視カメラでゲート付近をチェックし、「密」回避の対策を講じるなど、可能な限りの努力を払ってきた。

こうした成果は代表戦にも還元できる。収容率50%での開催が検討されている東京五輪、ひいては先々の国際スポーツイベントにもつながっていくはずだ。

「コロナ終息が見えず、日韓関係も最悪なこの時期になぜ日韓戦を行うのか」という反対論も両国から聞こえてくるが、注目度の高い一戦だからこそ、未来へのインパクトは大きい。

その一歩を踏み出せるのは、日本のスポーツ団体で最も資金力があり、海外とのネットワークを持ち、2002年日韓W杯など国際大会運営ノウハウを備えてきたサッカー界くらいと言っても過言ではない。2021年が協会創立100周年ということもあり、自らコロナ感染経験のある田嶋幸三会長も「是が非でもやり遂げる」という強い覚悟を示したのだろう。

とはいえ、これまで以上にコロナ感染対策を徹底しなければ、安心・安全のスタジアムは作れない。第3波到来で厳格な入国制限が講じられ、プロ野球とJリーグの新規外国人選手の入国もかなっていない中、いかにして日本代表選手や対戦相手を入国させ、2週間の自主隔離期間なしに試合運営をするかというのは、非常に頭の痛い問題だった。

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