ディズニー「38歳デジタル戦略部長」の重大使命 発信強化で目指す初心者に優しいテーマパーク

拡大
縮小

その後も人気アトラクションに優先的に入場できる「ファストパス」機能を追加するなど、ゲストの待ち時間や移動時間を減らし、負担の軽減に努めてきた。また、直接の問い合わせやSNS上の口コミ、現場のキャストの声も取り入れ、UIを含めたアプリの改善も続けてきた。ここまでは、増え続けるゲストに対応し「どう楽しんでもらうか」という対策だった。

最優先は安全対策に変化

ただ、コロナ禍でデジタル戦略の方向性が一変する。ユーザーが快適に過ごすだけでなく、ソーシャルディスタンスの確保など、安全対策が第一になったのだ。

そこで、2020年9月には、指定された時間に対象となる施設の列に並べる整理券の「スタンバイパス」、対象となる施設の中から利用したい時間帯にエントリーし、当選すると利用できる「エントリー受付」の機能を追加している。ゲストを時間帯ごとに分散させる取り組みだ。

本来なら、ゲストが並ぶ時間もテーマパークにとって重要な演出のひとつ。待つ間も世界観を楽しめるよう、装飾があったり、音響の工夫も至るところでめぐらされている。だが、今は感染防止策が最優先。コロナ対策チームなどとアイデアを出し合い、ディズニーとも通常以上の速度で調整を進め、約2カ月でサービス開始にこぎ着けた。

新エリア「美女と野獣」はエントリー受付の対象施設。ゲストは抽選で当たれば体験できる(写真:オリエンタルランド)

安心・安全はもちろんだが、今後デジタル戦略として力を入れるのは、ゲストの情報格差を埋めるようなコミュニケーションだという。

ディズニーは熱心に通うリピーターが多いことで知られる。彼らはパーク内にどんな施設があり、どう動けば効率的に楽しめるか熟知している。自ら情報発信するファンも多い。一方で、数年に一度訪れるようなゲストは最新情報に乏しい。そこで、スペシャルイベントを含め、アプリを開けばさまざまな情報を得られるようにしていくという。

実際、前述の「エントリー受付」を開始した際には、「こんなショーがあったのか」と施設の存在に初めて気づいたという声もあった。テーマパークではとかくアトラクションが注目されがちだが、劇場も、ショップもレストランもある。そのほか、隠れたスポットも多く存在する。多くのゲストが楽しめるように、積極的に情報を発信する狙いがある。

次ページゲスト1人当たり売上高も増加へ
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT