コロナ以降も「仕事で淘汰されない人」の3条件 ツールと情熱をもった「個人」が生き残る

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一個人の情熱が生み出した「ダイヤの原石」を組織の力を使って磨き上げ、形を整え、世の中の多くの人がそのメリットを享受できるようにし、結果として利益を上げて株主価値に結びつける、それが会社の役割です。

コロナ後のリモートワークは、ある意味、そんなイノベーションを起こすには絶好の機会だと私は思います。

通勤時間が不要になり、無駄な会議(オンライン会議も含める)、雑談、飲み会、付き合い残業などがなくなれば、優秀な人たちの生産性は格段に上昇します。これまで1日かけてやっていたような仕事を、午前中の3時間で仕上げてしまうような強者が必ず現れます。そんな人たちこそイノベーションを起こす力を持っているので、会社側も彼らに対して「作りたいものを作る」機会を与えてあげればいいのです。

この考え方は、Googleの20%ルール(勤務時間の20%を担当外の業務に使う)を、もっとルーズにしたようなものです。

与えられた仕事をこなしている限りは、例えば50%以上の時間でも「好きなものを作る」ことに使っても構わない……どころか、イノベーションを起こせるのであれば大歓迎でしょう。

メドがついた段階で経営陣にプレゼン

その代わり、会社のリソースを使って開発中のものは、常にオープンな形で会社に見せてもらい、Slackのチャンネルなどを使って、会社の他のメンバーとコミュニケーションを取りながら進めてもらうのです。

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そしてある程度メドがついた段階で、経営陣に対してプレゼンをしてもらい(これも非同期なテキストベースのもので構いません)、経営陣に「会社の方向性にマッチしたダイヤの原石」と認められたら、予算がついて本格的にスタートします。

その際にも、経営陣の多数決ではなく、経営メンバー(例えば副社長以上)の1人ひとりが「イノベーション予算」を持っており、彼らから十分な予算をもらうことができたら(たとえサポートする人が1人でも)スタートできるようにするのがよいと思います。

「ダイヤの原石」と認められながらも会社の方向性とマッチしない場合もあると思いますが、そんなときは、本人さえその気になればスピンアウトさせてあげればよいと思います。

その際には、会社の投資部門が投資する価値があるかどうかを客観的に評価し、価値があると見たら、本人が普通株を、会社が優先株を持つ形でスピンアウトすれば、資金力を持たない個人も新会社の大株主になることができます。

中島 聡 Singularity Society代表

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なかじま さとし / Satoshi Nakajima

1960年生まれ。米国シアトル在住。早稲田大学大学院理工学研究科修了。米ワシントン大学でMBAを取得。早稲田大学大学院修了後、NTTの電気通信研究所に入社し、わずか1年で設立間もないマイクロソフト日本法人へ転職。3年後、米国本社へ移り、Windows 95、Windows98、Internet Explorer 3.0/4.0のチーフアーキテクトなどを務めた。現在は、シンギュラリティ・ソサエティ(2018年8月設立)代表理事としてAI時代をリードできる人材育成に取り組む。著書『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』(文響社)。

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