現場知らない「コロナ専門家」への違和感の正体 200人超のコロナ患者治療した感染症医の疑問

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宮城県では3月中旬以降に新規感染者数が過去最高を更新している。原因として有力視されているのが、2月23日に再開した、GoToイート。岡教授は感染対策の見直しが必要だと指摘する。

「1年前、私を含めて感染症の専門家は手指消毒などの『接触感染』対策を強調しすぎていました。もちろん手指消毒は必要なのですが、現在では『飛沫感染』が中心だとわかっていますので、会話、くしゃみ、咳などで飛ぶ微量な唾液にとくに注意しなければなりません。

1メートル以上の距離を取り、不織布マスクをしっかり着用すれば、十分に予防できる。ただし、飛沫を通してしまうウレタンや布マスクに予防効果は劣ると推定されています。フェイスシールドだけやマウスシールドはあまり意味がないので、不織布マスクを可能な限り選択すべきです。

飲食店で注意が必要なのは、マスクを外して密接し、『飛沫感染』に無防備になるからです。会話をしない、距離をとるなど対策を徹底しないと再び感染が起きると肝に銘じるべきです」

人工呼吸器に対する「誤解」

コロナ治療の「切り札」として報道されていたのが、人工呼吸器やエクモ(体外式膜型人工肺)である。前述の外科医・大木隆生教授らは、人工呼吸器やエクモが使われるICU(集中治療室)を、人工呼吸器を扱える外科医も動員してフル稼働すべきと主張しているが、そこに大きな誤解があると岡教授は言う。

人工呼吸器をつけた重症患者(写真:岡教授提供)

「実は人工呼吸器とエクモが、コロナを治すわけではありません。患者の回復力と薬で治るための時間を稼ぐための、生命維持装置なのです。

それに、肺が健康な状態で手術を受ける患者と、呼吸不全になっている重篤な状態のコロナ患者とでは、医師にとって人工呼吸器の管理に要求される知識、内容が違います。例えると、普通自動車の運転と、大型ダンプカーの運転くらいの違いでしょうか。

重症化すればコロナによる肺炎の治療をしなければなりません。ステロイド剤やリウマチの治療薬の使用など、専門性の高い治療薬を使うため知識と経験が要求されます。加えて徹底的な感染予防策を続けながらの治療です。感染症や集中治療の専門家が司令塔としていないと、重症者の救命を目指す質の高い診療は難しいでしょう」

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