メール読みは受け身。発信源に人は集まる--『朝イチでメールは読むな!』を書いた酒巻久氏(キヤノン電子社長)に聞く

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--この本には「単純接触の原理」「記憶はウソをつく」ほか、心理学の成句も引用されています。

部下を持つ中間管理職になったときには、心理学をしっかり体得しておかないといけない。上司の心理を読み、同時に部下の心理も読む。そうしないと成功しない。部下のほうは言いたい放題。上司の意見を聞きながら部下を説得しなければいけないし、どういう心理のときにこう言うのか、常日頃、人間心理を学んで理解を深めておくことだ。

もともと出世とは結果であり、目的にはできない。実績によって結果として上が評価する、それが正当なあり方だ。だから、好き嫌いでは困るが、そうなるには部下が気持ちよく動き、上司が理不尽なことを言わないようにさせるにはどうしたらいいか。心理が読めるようにならないといけない。

--無能な上司につく場合もある?

いちばんいいのは優秀な上司、優秀な部下と一緒に働くこと。そのときは一生懸命に働ける。働きが鈍るのは無能な上司と優秀な部下に挟まれたときだ。これは収拾がつかなくなる。上司に説明しても、わかってもらえないとなったら、精神的にまいってしまう。そのときいちばんいいのは、私もそうしたが、毎日定刻には帰ってしまうこと。上司のペースに合わせて適当にやっておく。時に解決してもらうことだ。

--始末書10枚、300億円の赤字を出したこともあるとか。

赤字はスティーブ・ジョブズとやったコンピュータ開発でのこと。キヤノンはその点、失敗に対しておおらかだ。赤字を出したことが問題なのではなくて、納得できる終息の仕方をしたから、もういいだろうと無罪放免になった。「読みが浅い。もう少しブレーキのかけ方もあったろうに」とも言われたが、当事者にはそれは難しい。

もっとも、最先端の少し上を目指したので、複写機やカメラなどに使える技術が残った。人も育った。そうではなく、人マネをしたものでは残るのは借金だけだ。人も育たない。企業としてやるなら、最先端ないしその上の技術開発こそ手掛けるべきだ。この私の「屁理屈」を通していただけた。

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