渡辺直美、ゆりやんが「世界進出」狙う納得理由 彼女ら彼らの「才能」は日本に収まりきらない

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多少スベっていても一切構わずに平気な顔で次のギャグを繰り出してくる彼女のハートの強さを、日本のお笑い界では持て余しているようなところもある。

日本のバラエティー番組では、芸人同士の集団芸が求められる場面が多く、ゆりやんのような独立独歩型の芸人は浮いて見えてしまうことがある。先輩・後輩という上下関係に基づく集団芸に馴染めないタイプの芸人が、そこで苦戦するというのはもっともなことだ。

もちろん、ゆりやんがそれを全くできていないわけではない。ただ、彼女の才能を最も生かせるのはその場所ではない、というだけのことだ。彼女は「R-1」と「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝を果たしていて、国内ではすでにトップクラスの実力派芸人であるのは間違いない。

スポーツの世界でも、日本国内でトップレベルのアスリートがより高いレベルを求めて海外に行くのは普通のことだ。ゆりやんもそんな感覚で、当たり前のように「次は世界だ」というふうに思っているのではないか。

日本には村本大輔を受け入れる土壌がない

ウーマンラッシュアワーの村本大輔も、アメリカ進出を目標にしていることを公言している。彼は漫才や漫談で社会的な問題を取り上げることが多い。自分はこう思う、こう考えている、あなたはどう思うのか。そんなメッセージ性の強い芸を披露している彼は、アメリカのコメディアンが社会風刺的なネタを堂々とやって拍手喝さいを浴びている姿に魅了され、自分もそれをやってみたいと思うようになった。

彼は何度かアメリカを訪れ、現地のコメディークラブに出向いて、英語でスタンダップコメディーを演じている。今後もアメリカで舞台に立ち続けていくという。

ウーマンラッシュアワーは2013年の「THE MANZAI」で優勝している。村本が実力のある芸人であることは間違いない。最近テレビのネタ番組で披露している社会風刺の漫才も、ネタとして面白いと個人的には思う。

だが、そんな彼はなぜか世間に嫌われていて、その実力を正当に評価されていないところがある。彼が嫌われてしまうのは、日本社会にまだこういう種類の芸を受け入れる土壌がないからだろう。

日本人でアメリカに渡って、現地でスタンダップコメディアンとして活動している人は何人かいる。そこで結果を残している人も存在する。しかし、海外でのコメディアンとしての活動は、日本の社会やお笑い界ではほとんど評価の対象にならない。日本では、日本のお笑いと海外のコメディーは別物だと考えられているからだ。

だからこそ、日本できちんと結果を出した人が、海外に行ってそこでも成功を収めるという事例を作ることが重要になってくる。ゆりやんや村本にはそれが期待できる。

個人的には、笑いに国境はないと思う。細かい好みや国民性の違いはあっても、面白いという感覚自体にはそれほど大きな差はないはずだ。日本で面白いと思われている芸人が海外でも結果を出せば、そんな当たり前のことに気付く人も増えるのではないか。

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