中国との付き合い方、ベトナムに学べ! 武部勤氏が説く「挑発に乗らない知恵」

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衆院議員時代に日越友好議連会長を務めるなどベトナムに関する第一人者である武部勤氏(撮影:梅谷秀司)

――こうした歴史に基づく友好関係が、現在のベトナムにも息づいているということでしょうか。

武部 社会主義国であるベトナムは、中国と同じ共産主義国家と見なされることが多いですが、実際にはそうではありません。中国は共産主義革命によって、その5000年の歴史を否定しました。一方でベトナムは社会主義国家の建設を目指しましたが、歴史や文化を否定したわけではありません。国父と言われるホー・チ・ミンは祖国建国の際に、ファン・ボイ・チャウから反植民地主義を取り入れ、ファン・チュー・チンから反封建主義を取り入れたのです。そこには歴史の否定はありません。そもそもベトナム憲法には「敬老精神」をうたった文言が入っています。儒教の教えがなお色濃く残されているのが、ベトナム社会なのです。大乗仏教の信者も多く、日本との近似点は少なくありません。

ピンチをチャンスに

――今後、日本はどうすべきでしょうか。

武部 ベトナムなど東南アジアは日本の安全保障にとって極めて重要な国であることを理解しなければいけません。メコン諸国が安定する意味は大きいのです。ベトナムは日本のシーレーンにあり、船舶の安全航行の鍵を握る国です。また日本のリーダーシップに対する期待もあります。まだ日本が経済大国であるという信用があるのです。日本なら任せられるという期待も大きい。そうした信頼をより醸成し、協力関係を構築する必要があります。

また日本にとっては、中韓が慰安婦問題にこだわっていることがネックです。しかし東南アジア諸国はそうしたこだわりは大きくありません。

そういう意味で、ベトナムなど東南アジア諸国との連携をさらに強める必要があります。そのためにはベトナムとの間の「3大案件」、すなわち高速鉄道と高速道路、そしてホアラック・ハイテク・パークの建設計画を進めなければいけません。ホアラック・ハイテク・パークには優秀な人材が求められ、そのために「アジアのハーバード」が必要です。私たちが日越大学の建設を計画しているのは、「アジアのハーバード」は本来はアジア人が作るべきだという考えに基づいているからです。

私はピンチをチャンスにできると思っています。中国が「太平洋の西半分は我々が支配する」と公言しながら進出してくるのはピンチですが、これに対して日米のみならず、アジア諸国が結束すれば、いい結果が生じるに違いありません。そうすれば、アジア全体の平和と繁栄が実現するのです。そのためにも、不要な力の台頭を許さないという毅然とした姿勢を見せることが必要ですね。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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