日本全国、総「サザエさん化」現象を考える
つい、磯野家の誰かに自分を重ねる不思議

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6月29日(日)の放送は、「ぼくはオオブネ」「あこがれの家族会議」「お父さんと野球観戦」という3本立てでしたが、どれも家族愛に満ちた内容でした。

「ぼくはオオブネ」では、タラちゃんが、「自分が大船になってカツオくんに大船に乗ったようなつもり」になってもらおうと、何かと誤解されるカツオくんを先回りしてかばいまくる話。その結果、波平さんにしかられてしまうのですが、タラちゃんは最後までカツオくんの味方。

波平:こんな小さい子に気を遣わせるということは、カツオがだらしないからだ!
カツオ:はい……。
タラオ:だらし……じゃないです!
サザエ:なんでカツオの味方をするの?
タラオ:カツオ兄ちゃんが好きだからです!
(出所:「サザエさん」2014年6月29日、フジテレビ系放送)

「お父さんと野球観戦」では、カツオくんと波平さんが球場で野球を観戦中、飛んできたホームランボールを波平さんがカツオくんに当たらないようにして、何とかして捕球しようとするシーンがありました。そしてその夜、2人は同じ部屋で寝るのですが、こんなセリフが。

カツオ:父さん、手、痛くなかった? ボールをキャッチして。
波平:なーに、ちょっとしびれただけだ。
カツオ:ありがとう、お父さん。僕を守ってくれて。
波平:親が子を守るのは当たり前のことだ。
カツオ:お父さん、僕、親孝行するからね。
(出所:「サザエさん」2014年6月29日、フジテレビ系放送)

こんなストレートなセリフ、ドラマや小説でもなかなか書けませんが、「サザエさん」の世界の中ではごく自然に聞こえます。わざとらしくもなく、押しつけがましくもない。親子で見ている人たちも、ひとりで見ている人も、家族っていいな~と思わせる、ミラクルな世界観です。

大事な部分は頑として「変えない」

主人公への共感、家族愛という普遍的なテーマに加えて、「サザエさん」の高視聴率の理由は、何と言っても、日曜日夜6時30分という放送時間帯です。この放送時間帯は45年間、変わっていないのではないかと思いますが、日曜日の夕方というのがまさに絶妙。月曜日からの仕事を前に、何となくブルーになりがち。家族がいない一人暮らしの人にとっては、何となく寂しくなる時間帯。そんなとき「サザエさん」を見ると、「明日からも頑張ろう」と思えてくるから不思議です。

日曜日の夕方に「サザエさん」を見て、現実とのギャップに気分が落ち込むことを「サザエさん症候群」と呼ぶ人もいるようですが、番組に寄せられているコメントを読んでいると、励まされている人のほうが多いように思います。

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