富士フイルム、次の標的は「育毛」市場 ミドル女性の“薄毛の悩み"に応えられるか

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女性用育毛市場には、通販のはぴねすくらぶが販売する「柑気楼」、医薬品製造の富士産業の「リリィジュ」、アンファーの「スカルプD」など、先行する競合他社も少なくない。異業種から化粧品事業に参入した富士フイルムは、強みである化学技術によって競合との差別化を狙う。

今回投入する富士フイルムのスカルプフォーカスでは、育毛有効成分や、毛髪のハリ・コシに寄与する成分のナノグリチルレチン酸を配合している。これまでグリチルレチン酸は、育毛効果が高く、多くの養毛剤に配合されているものの、溶解性が低いために、高濃度のエタノールに溶解して配合する必要があった。

だが「エタノールは育毛を抑制することが実証された」(富士フイルムの医薬品・ヘルスケア研究所の永田幸三・統括マネジャー)。そこで富士フイルムはナノテクノロジーを生かし、エタノールを使用せずにグリチルレチン酸を皮膚浸透させる、ナノグリチルレチン酸を開発。同様に、毛髪のハリ・コシに寄与する成分でも、ナノ化で浸透性を向上させた。

当面は通販とアンテナショップで販売

当面は一般店舗での販売はなく、富士フイルムの通販サイトのヘルスケアラボラトリーと、同社のアンテナショップにて販売される。中期的には実店舗での販売も視野に入れており、「発売から3年後にヘアケア分野で年間売上高10億円」(山口豊・ライフサイエンス事業部長)という目標を立てている。

富士フイルムの化粧品事業は、「参入後数年の急成長期からは落ち着いてきたが、足元でも着実に売上高を伸ばしている」(山口事業部長)。化粧品事業の売上高規模は非公表だが、2010年度には主軸のアスタリフトの売上高が100億円を超えた。

今回の化粧品事業をはじめ、液晶用フィルムや医薬品など、かつて大黒柱だった写真フィルムから派生した多角化の成功事例として、富士フイルムの事業は取り上げられることが多い。育毛という新分野でも、技術力を生かした商品開発が市場に受け入れられるか。その動向を競合他社は注視している。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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