フラフラになって倒れる子育てはもういい あくまでも子ども目線でーー文京区長(下)

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子育ては、それぞれの家庭に合わせたカスタマイズ

坂之上:具体的な数字とかありますか?

成澤:うちの区役所は僕が育休を取るまで、男性の育休取得率はゼロでした。だけど今は17%にまでなったのです。国の目標の2.63%をはるかに超えています。というか、2020年の目標である13%だって超えてます。

坂之上:そんなにですか。

成澤廣修(なりさわ・ひろのぶ)
文京区長

1966年生まれ。明治大学公共政策大学院修了。区議を4期務めた後、2007年4月に区長に初当選。(現在2期目)。2010年4月、地方自治体首長初の育児休暇を2週間取得し、話題となった。その後、「男性職員の育児休業等取得促進実施要綱」を策定する等、職員が育休のとりやすい環境づくりをすすめている。 現在、内閣府少子化危機突破タスクフォース委員、東京都子供・子育て会議委員、東京都児童福祉審議会委員。

成澤:はい。僕が育休を取ったときにね、決まりごとを作りました。それは、子どもが生まれた男性職員には、上司が必ず育休を勧めなさいということ。社員規定みたいな感じで、決めました。

坂之上:社員規定?

成澤:はい。文京区役所で働く人の決まりとして盛り込んだのです。

坂之上:へぇ。

成澤:ある職員に子どもが生まれたら、そこの課長が「育休を取りたいなら、遠慮なく取ってね」と、勧めてあげる。職員が「いや、うちは夫婦で話し合った結果、家のローンがあって休みたくないのでけっこうです」と言えばそれでOKだし、「はい、ありがとうございます」って言えば取ればいい。

坂之上:上司が必ず勧める、と。

成澤:はい。実は、僕は絶対に育休を取るべきだ!とは思っていないのです。子育ては家庭ごとのカスタマイズだと思います。奥さんと話し合って育休を取るもよし、どちらかが専業主婦(主夫)になるもよし。いろんなやり方があるわけだから、それぞれが話し合って、それぞれの家庭に合うようにカスタマイズすればいい。

坂之上:なるほど。

成澤:ただ、男性がどんなに育児や家事に参加したくたって、社会や会社が許してくれなかったら難しいですよね。育休を取りにくい、自分からは言い出しにくいという心の壁だけは、取り除きたいと思ったのです。

坂之上:よくわかります。

成澤:で、この取り組みを始めたら、育休を取る人が増えてきた。それだけでなく出産に立ち会いたいとか、子どもが病気になったとかで有給を取る男性が、8割近くにまでなりました。

坂之上:8割!

成澤:ほかにも、データが出てきてるんですよ。

文京区では、子どもの生まれる数、つまり「出生数」が増えてます。いちばん少なかったのが1998年で1000人でした。だけど、昨年は1800人ですから1.8倍。最近の5年間でいえば、16%も増えました。

坂之上:今、政府も出生率を上げようとやっきになってますよね。

成澤:だけど、上げるのは難しいと思いますよ。出生率は、ひとりの女性が、人生の中でどれぐらい子どもを生むのかというのを計算したものです。

やっぱり非婚や晩婚、不妊などいろんな課題がある中で、出生率を上げるのは難しいので、お子さんがひとりのご家庭に、2人目をつくろうと思わせる支援が必要なんじゃないかと思います。

坂之上:ひとり目でおカネがすごくかかって、「2人目なんて無理」って思うご家庭がほとんどですものね。

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