「合わない」時は、変わればいい 第7回 地域密着を超えた存在のスポーツ

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「スポーツ分野」の層の厚み

エアランゲン市には1972年に設置されたスポーツ局がある。前回、ドイツのスポーツは半世紀かけて競技以外の幅広いスポーツ像を掲げ、その具体策を展開したことを紹介したが、その流れとちょうど合う。同局は市内のスポーツ関連のあらゆる課題を担当する中核的な役割を担う。スポーツ施設を充実させるための振興策はじめ、スポーツイベントやプロジェクト、専門のフォーラムなどをコンスタントに展開してきた。もちろん、これらはスポーツクラブと共同で行うことも多い。また同市にはエアランゲン大学があり、同大学のスポーツ科学部もパートナーだ。

 他の政策とスポーツをうまくコーディネートすることもある。同市は経済分野では医療技術の開発などを中心に医療都市政策を展開しているが、これに関連付けて2005年に「健康都市」という年間キャンペーンを行なった。この時もスポーツクラブはパートナーとして重要な位置付けにあったが、裏を返せばスポーツクラブが充実しているために実現できるキャンペーンだった。

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1972年から40年でスポーツクラブ、メンバー、指導者、全てが増えた(エアランゲン市の資料を元に作成)

スポーツ局ができて以来、「数」も増えた。1972年当時はスポーツクラブの数は50しかなかったが、2012年の段階で102まで増加。メンバーも2万人弱(内子供・青少年は約5000人)だったものが、約3万9000人(同約1万人)まで増えた。あるレベルのライセンスを持つトレーナーの数もかなり伸びた。10万人の都市で4割弱のスポーツ人口がいるわけだ(グラフ参照)。

 こうしてみるといかにもスポーツに関連した組織や人的な層が厚いことが推測できるが、それを目の当たりにするのが毎年1月に行われる「スポーツマン舞踏会」。舞踏会は現代でも社交の常套イベントだ。申しこめば誰でも参加できる夜会で、10代後半の参加者もけっこういる。そしてスポーツクラブの関係者はもちろん、市長以下、一部の議員、スポーツ関係のスポンサーになっている地元の企業・銀行の担当者なども正装で集う。ダンスタイムの合間には、青少年によるアトラクションをはじめ、その年のスポーツ賞の表彰が行われる。

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