日本で蔓延る「孤独=悪」の風潮に問いたい問題 1人はつらくて寂しいと考える人は多いのか?

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そして、実は大きな勘違いがあるのは、「1人でいるから孤独でつらいのだから、誰かと同居すれば寂しくないよね」と、1人暮らしの人を強制的にシェアハウスや集団の中に取り込もうとしてしまう考え方があることです。誰かと一緒に同居すれば解決できるような簡単な問題なのでしょうか?

孤独が悪だという言説が不安を煽るたびに、大部分の人は「孤独は苦痛なのか?」と自分自身に呪いをかけてしまっています。本来「孤独は苦にならない」と思っていた人でさえ、そう感じる自分はおかしいのか?と迷わせてしまいます。

孤独を苦痛と感じる人は少数派

実際「孤独を苦痛」と感じる人間は少数派です。私の主宰するラボで、2020年に実施した調査によれば、「孤独が苦痛」と回答する未婚男女はわずか数%であることに加え、既婚男女でさえ1割前後しかいません。

当然ながら、既婚は未婚に比べて、「誰かと一緒の方が充実する」割合が高いのですが、同時に「1人の時間も楽しめる」割合も同程度存在します。むしろ、「孤独を楽しめる」のは、未既婚ともに男性より女性のほうが多いことの方が意外ではないでしょうか。

何も「誰とも接触せず1人で勝手に生きる」ことを推奨しているのではありません。「人は1人では生きていけない」というのはその通りです。しかし、「1人では生きていけない」ということと「誰かと一緒でなければ生きていけない」こととは別です。

むしろ、「自分の外側に誰かがいさえすれば孤独ではない」という考え方の人こそ孤独に苦しみます。

私は、ソロ社会の研究を通じて、現在「孤独学」の体系化をしています。昨年12月に上梓した『「一人で生きる」が当たり前になる社会(脳科学者中野信子さんとの共著)』でも「孤独は悪なのか?」について論じています。

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