不意の『ゼクシィ』襲来!…が起こるワケ “結婚式なら”つねに一人勝ち、圧倒的な強さの秘密

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花嫁主体からカップル一体、周りを巻き込む結婚式へ

2010年9月に「ふたりらしい結婚式」のつくり方Specialという特集が組まれたのもその潮流の一環かもしれない。そのときの副題は「わたしも! 彼も! ゲストも楽しい!」である。だが、この副題が一見花嫁主体の結婚式からの離陸を示唆しながら、同時に結婚をめぐる人々を、花嫁を中心とした同心円上の広がりの中にとらえていることには注意する必要がある。

というのも、2010年12月の『ゼクシィ』の「新創刊」は、結婚の中心を花嫁からカップルへと明確に移行させたからだ。そこでは結婚式はカップルが一体としてつくるものという感覚が前面に押し出され、以降は「ふたりらしさ」を強調する編集がより際立つようになる。

それと同時に、「新創刊」後の構成は、「一生続く“幸せな結婚”」など「結婚後」を見据えたものになった。たとえば付録も、ファッション誌に付くような単にカワイイものから、カワイイながら結婚生活において実用的、つまり結婚後を想像できるようなものに変わってきた。

こうした一連の傾向は(彼女たちはそういわれるのを嫌がるけれど)、『ゼクシィ』もまた、結婚を現実的に考えようとする婚活ブームの影響を強く受けていることを示唆しているように思う。話題になった「妄想用婚姻届」もそう。カップルで和気あいあいと具体的な夫婦のかたちを決められるよう配慮したこの付録は、結婚前から将来のことをしっかり考えようという、婚活の気分を多分に含んでいると言える。

とはいえ、表立ってそんな潮流を取り上げはせず、その誌面は、いつでも幸せな結婚への賛歌を奏でつづけている。そしておそらく、若い結婚予備軍はその賛歌、美しく包装された現実を求めているのだと思う。

結婚予備軍とて社会の潮流に無自覚なわけではない。けれど、誰しも冷徹に現実を直視するのはつらいものだ。

『ゼクシィ』への全幅の信頼は、結婚式の知識という内容はもちろんのこと、結婚賛歌と時代の潮流の絶妙なバランスの上に成り立っている。打倒『ゼクシィ』、そんな猛者はしばらく現れそうもない。


「週刊東洋経済」2014/6/28号:海外投資家の正体

榛原 赤人
はいばら あかひと / Akahito Haibara

1988年生まれ。都内某大学院の社会科学分野博士課程に在籍。17歳の頃から結婚をめぐるもろもろに関心を持ち、婚活ブーム以降は、その思想的背景に注目して、机上での結婚探求を行っている。
 

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