プロ野球名物、乱闘シーンが消えたワケ 元プロ野球選手、川崎憲次郎氏に聞く「若者論」

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川崎:昔はそういうピッチャーが多かったんです。今は乱闘もないですけどね、あんまり。そういう乱闘がないっていうのがいちばんの証拠かもしれない。

原田:テレビの「プロ野球珍プレー・好プレー大賞」なんて乱闘シーンばかりでしたからね(笑)。

川崎:みんな胸ぐらつかみ合って、ユニフォームがビリビリになったりね(笑)。僕はね、向こう気が強くて表に出すピッチャーが好きなのです。そういうのを無理に出せとは言わないけど、自然に出せるようなピッチャーになってほしいんですよ。

ピッチャーって1球1球が勝負なんで、気を抜くことがまずできないんですね。そういう中で、たとえばツーアウト満塁、打たれたらおしまいという場面で三振取ったとき、どう思うんだって。やっぱりガッツポーズも出て、ほえたくなるでしょうと。だけど今はバーンと三振を取っても静かなんですよね。どうなんだろうなあ、その表現の仕方は、と思う。

原田:今、一般の若い子たちは「空気を読む」世代なんて言われてて。確かにあまり自己表現を大きくする子はいない、むしろ周りにどう見られるか、人の目を気にする同調志向が非常に強くなっているのです。たとえばうまくいってもガッツポーズをしたら、周りから「ちょっとこいつ、調子乗ってる」と思われるのが嫌だなと。ひょっとしたら選手もそういうふうになっているかもしれないですね。

川崎:それも時と場合だと思うんですよね。やっぱり間違ったところでやって、浮くヤツはいますよ。だけどこの場面で抑えたら普通そうなるだろうっていう場面もたくさんある。むしろそういう場面で抑えたら、ちゃんと表現をしてベンチに帰ってきてほしいなっていうのはあるんですよね。ちゃんと自分の気持ちが素直に出るのが、自然だと思うんですよ。

原田:僕は熱烈なジャイアンツファンだったんで、川崎さんのガッツポーズはすごく記憶に残ってますね。川崎さんは巨人キラーだったから、出てくるともうチャンネル変えようかなって(笑)。本当に嫌だったですね。

川崎:あいつの顔見るのが嫌だ。あいつ大嫌いって言われるのがいちばんゾクゾクときますね(笑)。

原田:まあピッチャーとしては最大の賛辞ですもんね。

川崎:あいつ嫌だなあって敵チームから思われたら、それだけでも勝ちですからね。

(構成:江口和孝、撮影:梅谷秀司)

※この対談の後編は、6月30日(月)に公開します
 

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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