空前のブーム「新築戸建て」を割安に買う方法 マンションとは異なる戸建売主の「資金事情」

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これだけ売れているのに、新規着工戸数は増えていない。それどころか減っている。分譲戸建ての住宅着工戸数は前年同月比でマイナスが半年ほど続いている。これは土地仕入れが進んでいない状況を反映している。

新規供給が減少したこともあり、販売在庫は減少し、首都圏全体で2.5万戸まで減少した。これは適正在庫水準まで減ったことを意味している。こうなると、成約価格は大きく変動する。売れていないときと比較して、現在は成約価格が10%程度上昇しているのが実態だ。

それでも駅ごとの売れ行きはまだら模様で良しあしの差は大きい。その良しあしは一般の方でも把握することはできる。それがわかると割安で買えるかどうかもわかるのだ。そのためには売り方と売れ行きの仕組みを理解する必要がある。

戸建とマンションの売り方の違い

同じ分譲でも戸建てとマンションの売り方は違う。現在の分譲マンション事業の約半数の供給は「メジャー7」という財閥系を含む大手7社が占めている。開発規模も大きく、資金量も多く、販売終了までの期間も長いので、中小企業では分譲マンション事業はそもそもできない。

実際、物件ごとにいつ販売を終了できるかは本人たちでさえ、確約はできないほど水物である。ましてや、以前は「青田売り」と言って、モデルルームをつくって図面で販売していたが、最近は「竣工売り」と言って、出来上がった物件を内覧させながら販売する物件が増えた。竣工後の販売終了時期は今や事業者の体力勝負の問題になっている。

同じ分譲するにしても、戸建ての売り方はマンションと決定的に違うことがある。それは期間だ。戸建ては土地の仕入れから販売まで1年以内にやることが必須条件になる。この1年以内の短期で借入金を返済し続けることがその会社の信用であり、次の資金を借りる条件になっている。

これは分譲戸建て事業が大手寡占ではなく、事業者が分散して中小も多いからだ。この返済期間であれば、街の不動産屋も分譲戸建て事業をやり始めることができる。この返済期限1年の呪縛は返済期限に近づくと値引きをすることを示唆している。売れ残りは値下げ処分されるのだ。

その売れ残りは需給バランスで決まってしまう。なぜなら、近隣で購入する人が多いので、市場が狭いからだ。分譲戸建てを購入する世帯は小学生の子どもを持つ家庭が多い。公立小学校の学区域内で購入するケースが多いのもこうした背景がある。

こうして公立小学校の学年の人数が毎年ほぼ一定のように、購入予備軍である需要はほぼ一定なのに対して、供給は土地の供給に合わせて増えたり減ったりする。こうして需給バランスが駅ごとに違ってくるのだ。

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