4月以降「テレビ番組の質低下」が不可避なワケ 五輪は期待薄、リーマンショック以上の緊縮へ

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では、バラエティ番組の制作現場はどうだろうか。冒頭で「過去の総集編を放送するバラエティが増え始めている」と書いたが、実はこれも去年の春から夏とは大きく様子が異なる展開を今後見せそうだ。

民放キー局のバラエティ番組プロデューサーはこう証言する。

「緊急事態宣言の発出を受けて確かにロケや収録を控えてはいますが、去年の春のときほどではありません。これも前回の教訓で、早め早めに前倒しでロケを進めていましたので、それなりの準備があります」

バラエティの制作現場も、やはり前回の緊急事態宣言で完全に番組制作がストップしてしまった苦い経験から多くを学んだようである。何カ月もテレビが再放送や総集編だけになってしまったあの事態を繰り返すことだけはなんとか避けたいという思いが強いようだ。現在は「総集編」になっている番組も、体勢を立て直してすぐに新作を復活させるのではないかというのである。

「再放送や総集編では数字もとれないし、商品として売れないというのが前回の緊急事態宣言で身に染みています。対策も前回よりわかっていますから、今回はできるだけ新作を作り続ける方向でがんばりますよ」

衝撃だった志村けんさんの死

志村けんさんの死はテレビ業界にとってこのうえないほどの衝撃だった。その後も大物タレントなどに感染者が相次ぎ、とにかく状況がわからない中、「出演者やスタッフに感染者を出さないように」とおそるおそる手探りで感染対策を試行錯誤してきた積み重ねが確実に生きている。

新型コロナの正体も少しずつ明らかになる中、「感染対策を取ればできるロケ」と「オンライン撮影に切り替えるべきもの」も整理されつつある。

「リモート収録へのスタッフの習熟も大きいですね。そして、海外のコーディネーターがリモートのロケを積極的に売り込んでくるようになりました。海外も含めて結構ロケができるようになっています」

ロケができる範囲が広がったことだけではない。去年の緊急事態宣言下で、多くの番組がこれまで放置していた過去素材をあらためて整理整頓し、研究した。その結果、新作の中にこれまでよりずっと巧みに過去の素材を混ぜ込んで、面白く構成するスキルが確実に高くなったのだ。

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