実験で新事実「ウレタンマスク」の本当のヤバさ ウイルス専門家、西村秀一医師が徹底検証

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──なるほど。今現在、第3次感染がなかなか収まらないのは、人々の「コロナ慣れ」があるかと思います。今までかからなかったのだから、大丈夫だろう、と。無論、過度に恐れることはありませんが、今一度「感染の防御」を注意喚起しなくてはいけませんね。

テレビなどを観ていると、出演者がマウスガードをつけています。それを見かけてしまうと「あれでいいんだな」と感染対策の見本と勘違いしてしまうかもしれません。しかし、断言します。マウスガードはマスクの代用にはなりません。エアロゾルを介した感染に対する防御には無力です。感染対策にはなっていません。

──改めてお話をまとめると「うつらないマスク」の最強は不織布マスクなんですね。わが家も今日から不織布に切り替えようと思いますが、ウレタンの着け心地も手放しがたいです。また、不織布だと肌がかぶれるという声もネット上で見かけます。ウレタンの上に不織布をつける二重マスクでもいいでしょうか?

構わないと思います。戸外でウォーキングをするときなど、他人とほぼ会わないときはウレタンや布マスクでいい。というか、堂々とマスクを外していいです。ウレタンマスクを寒さ対策とか、すっぴん隠しの目的で使うことには異論ありません(笑)。それに、つねにマスクをつけなくてはいけないわけではありません。運動や移動などで外を歩いているときは、マスクをポケットに入れてもいい。自転車での移動も同じですね。

「使ったマスクを触らないように」は都市伝説

──よく見かける「鼻マスク」はどうでしょうか? マスクを下げて鼻を出している状態ですね。

理屈からいえば、感染を広げない目的なら鼻マスクの状態でも、万が一ご自分が感染していても、よほどのことがない限り周囲に広げはしません。ただし、防御という意味では、口呼吸でない限り無防備状態と同じで、自分は吸ってしまうので感染者と接触した際に感染してしまうリスクは高いです。せっかく不織布マスクをつけていたとしても、防御になりませんね。

また、「使ったマスクを触らないように」というのは都市伝説です。あれは、咳をしている患者と対峙する医療現場での話で、一般生活の中に落とし込む話ではありません。普通に社会生活をしていてマスクの表面にウイルスがついたりはしません。たとえマスクで捉えたとしてもそれは表面ではなく、マスクの断面のどこかです。

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また、一般の人たちに対して「ドアノブに触るな」などというけれど、ドアノブで感染している証拠も出てきてはいません。気になるなら消毒すればいいですが、学校などで椅子などをあんなに拭く必要もありません。

とにかく、うつさない・うつらないマスクを正しくつける。換気をする。そして、密を避ける。これで乗り切ってください。アリバイ気味で的を外した対策に惑わされることなく、また過剰な怖れにおののくことなく、正しく防御することは、自分でやりようがあります。自分の知識と努力でできるのです。

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文藝家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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